特撮部門 ジャッカー電撃隊(1977/04/02〜1977/12/24)

ジャッカーはメジャーなんじゃね?とお思いでしょう。でも皆さん、ジャッカーのことをどれだけ知ってますか?知らないでしょう。ここでは改めてどういう作品だったのかと言うことと、作品としては短命な(また打ち切りぃ?)理由も挙げたいと思います。


巨大犯罪組織クライムに対抗するべく集められた国際科学特捜隊の四人のサイボーグ達。J、A、K、Qのカードをジャッカーと読み、様々な特殊メカと共に編成された無敵のサイボーグ部隊、それがジャッカー電撃隊だ。
元オリンピック近代五種ゴールドメダリスト、桜井五郎は核エネルギーで稼動するスペードエースに。元ジュニアウェルター級世界ランキング第2位のボクサー、東竜は電気エネルギーで稼動するダイヤジャックに。元麻薬担当刑事、カレン水木は磁力エネルギーで稼動するハートクイーンに。元国際科学特捜隊員の海洋学者、大地文太は重力エネルギーで稼動するクローバーキングに。
そして後半登場の実質ジャッカー電撃隊の指揮官、番場壮吉は四人のエネルギーを併せ持つジョーカー、ビッグワンに。
今日もクライムの陰謀を暴き、犯罪を撃滅する為に、戦えジャッカー電撃隊


っはい!ま、そう言う訳で東映スーパー戦隊物シリーズ第二作のジャッカー電撃隊です。シリーズ至上最初で最後の全員がサイボーグという設定。前回は、神崎氏コラムみたいになってしまったので今回はサイボーグということについても少し取り上げてみよう。
サイボーグとは、人類が過酷な宇宙での活動で必要な身体強化を目的にした概念です。元はSF小説が初出ですが。
人類が宇宙に出るには様々なハードルがあります。特に宇宙服における船外活動、EVAをするためには複雑な手順がありますが、その中で一番重要なのは減圧症を引き起こさないこと。宇宙服の気圧は地上や船内気圧の約3分の1らしいです。宇宙空間に合わせた気圧だからですが、この気圧に合わせるにはまず船の中を減圧し、それに少しずつ体を慣れさせます。その時間は12時間以上掛かるそうです。無理に減圧を短縮させると潜水病、所謂減圧症にかかるのです。つまり、SFやアニメ等では宇宙服を着ていれば宇宙空間に出られるという変な常識がまかり通っていますが、船外に出るにはこのように半日以上の準備が必要なのです。他にも太陽の激しい放射線嵐は鉛でガードされた船の壁を簡単に貫通し、中にいる人たちを被爆させてしまいます。この太陽フレアによる放射線嵐が通過するまで船内にいる人たちは更にガードされた壁や、部屋に退避しなければなりません。そうしても被爆の危険度をゼロにすることは現在の科学力では不可能なのです。尚且つ、太陽の放射線嵐は天気予報と同じである程度は予測できますが、ある程度だけに外れる危険性もあります。他にも超高速で襲ってくる宇宙ゴミデブリなどは予測する事が不可能ですから、いつも銃撃の危険に晒されている状態なわけです。このような様々な問題は未だ解決されてはいません。なら、周りの機械を強化発達させるより、生身を強化しようというのがサイボーグの原点です。
でも全身機械にしても、脳みそは生身だからねぇ(笑)まだ細かい作業の出来るロボットを開発して遠隔操作の技術を磨いた方が良かったりして。仮面ライダースーパー1(本来宇宙進出目的で開発されたサイボーグ)にだって負けねぇぞ?(笑)

ううむ、サイボーグについて語りすぎ。ジャッカー電撃隊は宇宙進出を目的にした物ではなく、クライムが開発した虐殺マシーン、デビルロボットに対抗する切り札なんですが。
で、初代ジョーカーである鯨井隊長は彼らをスカウトするのです。桜井さんには断られます。東さんにも断られますが、その直後に引き受けることを同意します。この心境の変化は誰にも理解できません(笑)カレンさんは麻薬組織のバックであるクライムから報復を受け父と自らの腕を失い、このまま再起不能になるよりサイボーグとなってクライムに対抗したいと自分からサイボーグになるよう頼みます。大地さんは海洋事故に遭い、窒息死したところを強引に復活させられてしまいました。取り敢えず三人は揃いました。スペードの人がいませんが、三人の改造手術後桜井さんがいきなり現れます。カレンさんを襲ったクライムの非道さを目撃し、その正義感から志願することにしました。
しかし、いくら正義のためとはいえ生身の身体を捨て去り機械の身体になるのに少しも抵抗が無いのはいまいち納得がいきませんでした。特にダイヤの東の心境の変化は現在に至っても理解不能です。大地さんに至っては同じ組織に属してというだけで改造されて復活させられます。本人の了解無しです。この中で改造されて一番納得いくのはハートのカレンさんだけですね(笑)紅一点なのに復讐鬼というのもどうかと思いますが。
四人はクライムの犯罪を暴くべく、時には刑事のような、時にはスパイのような活動で本拠地を探ります。その際に中性子スコープやエレキカッター、磁力を操って銃弾の弾道を自在に曲げる磁力波など、変身前の彼らでもかなりの探索能力と行動能力を持つのです。そして四人はデビルロボットが出現すると飛行要塞スカイエースに搭載されている強化カプセルに入り自身を強化して変身(現在まで変身アイテムを携行出来ないのは彼らだけ)するのです。しかし、正直専用道具や変身アイテムなどをデザインして玩具化した方が売れたのでは無いでしょうか。ここがまず打ち切り理由の一つ、スポンサーに優しくない番組作り(笑)
二つ目、ゲスト役がよくクライムに利用され殺されたり、葛藤を抱えたりするハードな内容。話が暗いとかえって子供たちが引いてしまいます。脚本家がハードな話と暗い話が大好きだからですが。主人公たちが自分の身体について葛藤を抱えると言うのも、多分子供には理解されないと思われます。当時は私も何で苦しんでるのか理解できませんでした。何年後かで彼らはサイボーグだからだということを知って納得した事を思い出しますね。おせぇよ!(笑)
三つ目、Gメン75等の影響を受けた大人向けな展開。クライム最新式の狙撃銃を解析したスペードの人は言います。
「国外に売って内紛を焚きつけてるんですよ!」
ソウナノカ!つーか子供に内紛を焚きつけるなんて言って理解出来るでしょうか。出来ません。つい最近DVDを借りて見ましたが、第二話でそんなことを言ってます。ビックリしました。大人には受けますよ?でもこれはあくまでも秘密戦隊ゴレンジャーの後番組であり、ゴレンジャーの視聴者がそのまま見ているのです。視聴者が離れていくのも時間の問題でした。
四つ目、遅すぎた路線変更。第23話から二代目ジョーカーである番場(宮内洋)さんの登場からハード路線からアクション重視の子供向け路線に変更されました。宮内洋さんの強烈な個性のせいもありますが、丹波哲郎さんの実子であるスペード役の丹波義隆さんは主人公を食われた形になっていたので中でも外でもうまく行っていない事が見え見えです。このせいでそれまでハード路線を見ていた人達まで離れていきました。
正直、製作者サイドはどうせいっちゅうねん!って感じだったと思うんですよね。仕方ないです。サイボーグっていう大前提があるんですから。戦うためには犠牲が必要、というある意味リアルな視点は実は仮面ライダー(初出1971年)からの引用です。ならそれを四人にすればもっと売れるんじゃないかという安易な発想から生まれたと言っても過言ではない作品なのです。当時、まだスーパー戦隊というカテゴリー自体がありませんでした。ただのゴレンジャーの後番という区分けだったのです。仕方なくこの番組は35話で打ち切りになり、後発の「バトルフィーバーJ」以降から徐々に人気が上向きになり、戦隊ものという新たな分類、一年ごとに制作され記念すべき30作を迎えるほどの長寿シリーズになっていったのです。上向きになっていった理由は諸説ありますが、バトルフィーバーJが放映される前に放送された日本版スパイダーマンに活躍する巨大ロボット、レオパルドンの特撮技術を応用してシリーズ化したのが一番の要因かと思われます。やっぱり飛行機とかバイクとかバギーだけじゃ売れないと判断したのでしょうね。

ある意味時代の徒花だったジャッカー電撃隊。しかし、このような失敗があったからこそ、これ以後のシリーズは子供からその父母にまで浸透し定着化したのだと思います。大人になった視点で見れば実はかなり面白い作品なのかも?見たい人はレンタルショップにGOだ!

余談
ビッグワン登場以降ハード路線から子供向け路線に変更され、それまで設定を忠実に再現していた番組作りから、設定なんてどうでもいいから面白おかしくしようという姿勢に変わって行った為、ビッグワンという存在がどういうものなのかよく分からなくなってしまいました。ビッグワンが変身するために強化カプセルへ入ったという描写はなく、番場の性格設定がかなり明るく破天荒な為、サイボーグなのか、それとも生身の人間が強化服を着て戦っているのか語られていません。他の四人の性能を兼ね備え、鬼のように強いと言うことからサイボーグじゃなきゃおかしい。でもそんな描写が無いので定説では生身、と言うことになっていました。今現在になっても彼が人間なのかサイボーグなのか分かりません。どっちなんだよビッグワン!(笑)