マルチメディアコラム 寺沢武一漫画版COBRA及びアニメ版スペースCOBRA

いやぁ、ついブックオフで完全版コミックス(当時掲載していたカラー原稿をそのままに掲載した物)があって買っちゃったらはまっちゃった。はまった、というのは正確じゃないか。連載当時からかなり読んでいたので、懐かしむ為に買ったというのが本当か。


遠い未来の世界、銀河系には様々な異星種族が入り乱れ、その治安は銀河連邦警察が辛うじて守っていた。そんな時代、コブラと呼ばれる一匹狼の正統派宇宙海賊がいた。相棒のサイボーグ、アーマロイドレディと共に銀河系を渡り歩く。彼の海賊行為は殺しは出来るだけ少なく、盗みはスマートに且つ美しくと言うのを信条にしていたが、海賊ギルドと呼ばれる組織が一匹狼のコブラに目を付ける。加入を迫る海賊ギルドだったが、コブラはその誘いを突っぱねた為、四六時中殺し屋に狙われることになった。多額の賞金まで掛けられてしまった為、コブラは町のチンピラにまで狙われる事になってしまう。
純地球系人類の彼ではあったが、その超人的な肉体と精神力は他の種族に追随を許さず、尚且つ左手の義手に仕込まれた精神力をエネルギー波に変えて撃つサイコガンは並居る敵を蹴散らした。しかし、そんな彼の噂はぷっつりと消えてしまう。銀河のブラックホールに吸い込まれたとか殺し屋に殺されたとか諸説様々だったが、実際には行方不明であった。そのまま五年が経つと、伝説の賞金首として人々の記憶から次第に薄れていった。
平凡なサラリーマンのジョンソンは、今日も朝早くに壊れかけた給仕アンドロイドベンに目覚ましを投げつけられる。壊れかけだった為か、今日が日曜日だと言うことも認識できないようだ。休日の日に早起きしたのも何かの縁か、雀の涙ほどのボーナスを持ってトリップムービー(脳内に擬似的な体験を見せる映画のような物)を見ることに決めたジョンソン。シアターに行き、ハーレムと宇宙艦隊の艦長を兼ねる様な映画を注文したジョンソンだったが、そこで見たのは海賊コブラの体験であった。平凡なサラリーマンの自分とは大違いな彼にひと時の夢を見るジョンソン。いい気分でいたのも束の間、帰宅途中に事故をおこしてしまう。事故の相手は先程見たムービーに出てきた下っ端海賊であった。思わずその名前を口にして銃を向けられる。あれは映画の話ではなかったのか!? 絶体絶命のその時、不意に左手が動き、轟音と共にその海賊を撃ち貫く。左手はすでに無く、そこにあったのは黒光りする巨大な銃。
混乱と共に帰宅したジョンソンはベンに自分がここにいつからいたのかを尋ねる。五年前だったが、それ以前の記憶を全く思い出せない。壁の仕掛けに触れると、そこには海賊コブラが使っていた銃と義手。次第に記憶がはっきりしてきたその時、海賊からの襲撃を受ける。ベンが盾になってくれた為に何とか撃退するジョンソンだったが、天井裏からも敵が。背中に銃を突きつけられるジョンソン。その危機にベンが動く。まるで蛹から蝶が羽化するように出てきたそれは、コブラの相棒、アーマロイドレディだった。レディの強力なパワーとサイコガンで襲撃者を一掃する二人。
平凡なサラリーマン、ジョンソンはコブラの偽りの姿だった。闘争の日々に明け暮れる生活に疲れを感じていたコブラは自ら記憶を操作し、顔を変えて人生をやり直そうと思ってジョンソンと言う偽りの人間を作り上げたのだ。しかし、闘争の日々を過ごしていた時には平和な生活を、平凡な生活をしていた時には刺激を。人間とは身勝手な物だと思いつつ、今度は刺激を求める。ギルドに顔が割れてしまった以上また闘争の生活に逆戻りだが、冒険と危険の待つ銀河へと再び身を投げ出していくコブラにはジョンソンには無い、不敵な笑みが浮かんでいた。


っはい。覚えている人も初めて聞く人も、大体概要を分かってくれましたね。当時かなりのクォリティを持つ寺沢先生の漫画は様々な先駆けでした。スペースオペラという分野を漫画にして表現し、更にコンピューターを使って原稿に着色する方法を一番初めに行なったのは彼なのです。今でこそコンピューター着色技術はすでに一般的ですが、すでに20年前にそれを行なった彼の着眼点は凄まじい物だったと思います。何せ当時は誰にも真似出来なかったのですから。まぁある意味、今の漫画技術をデジタルにしてしまった張本人かも。実は手塗りの着色原稿の方が好きな自分だったり。
1978年に週間少年ジャンプにて連載されたこの作品は、実は現在でも出版社を変えて継続されているのは正直驚き。当時珍しい書き溜め連載、つまりある一定の話数が完成したら順次掲載していく方法で、原稿が出来ていない時には休載期間を取るという、週間雑誌には余り見ない形式が取られました。その為、一週間で原稿を完成させるような多忙さは無く、作画クォリティを全く下げずに作品を発表することが出来たのです。が、これってかなり御大臣なんじゃ?(笑)でも、昨今では週間の作品は結構崩れがちらほらすることがありますし、いい物を時間を掛けて発表することは悪いことではないと思います。実際に寺沢先生の人気は高く、ジャンプではかなり重宝されていた事だと推測できます。その為に断続的な連載になるのも仕方なかったのでしょう。
1982年にはその人気もかなり上昇し、劇場映画になり後にはTVアニメも発表。そう、実は劇場が先行だと言うのも珍しい形だと思います。劇場は未見ですが、TVの方は何話か見てみました。
寺沢先生曰く、コブラの声優は山田康雄ルパン三世の声の人。すでに他界)しかいないと思っていたようですが、実際にはルパン色が強く出てしまう為(コブラでは無くなってしまう為)劇場版では松崎しげる、TVでは野沢那智が担当することになったらしい。当時TV見てた自分も山田さんがコブラやればいいのにと思っていましたが、それだと確かにコブラに変装したルパンになってしまうから、野沢さんの方が良かったのかもしれない。
現に、現在の自分は野沢コブラじゃなきゃいやんいやん。(笑)
TV版は基本的に原作と差別化したかったのか「スペースコブラ」というタイトル付けになっています。何でだろ、原作エピソードばっかりなんだけどなぁ。かなり脚色されているようですけどね。
しかし、これも80年代、バブルに制作された作品だった為か、画像の質がとてもいい。まるでディズニーアニメの様によく動く作画。でもルパンと差別化を図りたかったはずなのに、音楽がまたルパンっぽい(笑)主題歌とかトランペット等をよく使っているのが特徴なんですが、かなりルパンの雰囲気に近いんだよねー。音楽製作は羽田健太郎。やっぱりイメージが海賊と盗賊、余りもてない三枚目、無駄に出てくるグラマラスな美女等、被るところが多々合ったからこういうイメージになるのも仕方ないことか。主題歌のイントロだけ聞いたらどっちか分かんなくなるじゃん!(笑)
完全版の「コブラ」も12巻で終了かな? 出来れば続巻も出て欲しい今日この頃。皆さんはどんな風にこの作品を思い起こしますか?


余談。
しっかし、アンドロイドベンに成りすましていたレディは毎朝目覚まし投げつけて気晴らししてたのかね(笑)だってレディは記憶失ってないし。闘いの日々にふと偽装生活の事を思い出して「あの頃はよかったわ・・・」とか言ってため息を吐いたりするレディっていいかも(笑)
後、コブラのサイコガンってさ、何かよく分からないんだよね。義手はめた時にはどこに銃身がくるのかとか、時には右手よりも突き抜けて長かったりとか。精神力を使ったエネルギー波とか言うけど、実際には衝撃波になったり光線になったり熱線になったりもう自由自在。便利だな精神力エネルギー。
でも一番強いのは左手自体を射出するロケットパンチだったりして・・・。(笑)
「このサイコガンこそ、銃身が伸縮自在で、銃身自体が強烈なバネだったんだよ!!だからロケットパンチがあんなに強いんだよ!!」
「な・・・・なんだってー!!」
そんな描写、ひとっつも無いけどな。MMRネタで終了〜。