頑固一徹! 玩具の神様!

凄い眼光ですね

村上克司伝、超合金の男を読んだエクシです。
読んでない人は見ろー。特に玩具好き見ろー。
http://weekly.ascii.co.jp/books/books/detail/978-4-04-867798-1.shtml
玩具のデザイナーである村上氏は本来工業デザイナーだったんですよね。
それがひょんな事に特撮ヒーロー、アニメの巨大ロボット等を生み出す事になったのは、ある種偶然が重なった結果もありますが、明らかにその非凡な才能、そして自分の我を通し尽くす頑固さが要因となっているはずです。
下手すればその才能を開花させる事が出来ずに、町工場でずっとネジを生産し続ける職人さんになっていたのかも知れませんね。
そんな彼がマジンガーZに出会って、超合金玩具を考案する事になったのは70年代初頭。
ポリプロピレン製のジャンボマシンダーは確かに当時のメガヒット商品だった。子供は本気で遊ぼうとすると直ぐに壊れる物では駄目だったから。しかし村上氏は大味なジャンボマシンダーよりも、もっと精巧な、ディティールの細かい商品を生み出そうとして合金と言うカテゴリーを目指したのだ。
その製作には難航したらしい。ミニカー等の製法は確立していたけど、人型の、ロボットと言う商品を亜鉛合金で再現するノウハウ等どこにも無かったから。当時の鋳造技術はまだ未成熟で、金属パーツを作るときに必ずバリが出来る。そのバリを回転炉に入れて飛ばす「ガラかけ」と言う工程を行うと細かい突起物等が一緒に飛んでしまう……。泣く泣く耳の突起物はソフトビニール製で補うしか無い、等作っては失敗作っては失敗を繰り返す状況だったらしい。
予算も時間も限られている状況で、兎に角商品のGOサインを出すしかなかった村上氏。しかし合金製のマジンガーZの売り上げは当初の予想を覆す50万個、当時としては異例のミリオンヒットを生む。初めて行う商品においてパンチが飛ばない、バネが飛び出る等の不具合が多発したらしい。しかし親が交換に出そうとしても合金マジンガーを手に入れた子供は昼はポケットに入れて遊び、夜は枕元に置いて寝ると言った感じで手放す事を物凄く嫌がったのだ。だから返品は殆ど無かった。今考えてみると凄い話だと思う。
ジャンボマシンダーの様な製品は確かに二階から落としても壊れる事は無い(笑)商品だが、子供が遊ぶ事においてベストだと言う大きさではない。それに比べると20cm程の合金マジンガーは遊び易い商品だったのかも知れない。考えてみれば今現在の玩具事情とは全く逆だと思った。今現在では小さい玩具の方が主流で、大きい物の方が却って少ない。玩具メーカーも注目度を得たいが為にドデカイ商品を考案しようとする……。当時の子供があの時代の玩具(マシンダー)をもう一度、と言う飢餓感がそうした状況を生んでいるのかも知れないですね。
村上氏はこういった玩具の開発にも携わり、更に言えば戦隊ヒーローの衣装デザイン、ロボットのデザインまでにも広くその非凡な才能を開花し続けた。大鉄人17スパイダーマンにおけるレオパルドン等、殆ど村上氏がデザインの原案を行っている。コンバトラーV等も5つのメカが合体してロボットになる、と言う漠然とした企画が最初にあった状況で村上氏は「じゃあその5つのメカに役割を持たせよう」と自宅でさっさかデザインを仕上げて直ぐに持ってきたと言う。ゼロから変形ロボットを考案するライディーンを作るよりは全く簡単だった仕事らしい。工業デザイナーならではの才能である。因みにライディーンの名称は史上最強の力士と謳われた雷電北欧神話に出てくる最高神オーディーンを合体させた物らしいです。
頑固な面も凄い逸話が多い。自分が作ったゴッドシグマに誰があんな馬鹿でかい羽(ビッグウイングがあるせいで四体合体になったしね♪)を付けたんだ、おかげでカッコ悪くなったじゃないか!と激昂したり、撮影スタッフとの齟齬が多かった「宇宙刑事ギャバン」では「オレがギャバンを作ったんだ、俺がギャバンだ!」と叫んだりしたそうな伝説が数々残っている。俺がギャバンだ!と言い放った、その我を通し尽くす性格は頑固一徹と言うしかありませんね。
シド・ミード氏とも親交があり、ターンエーガンダムのデザインでシド・ミード氏が悩んでいた時に髭デザインのガンダムを考案してこれで良い物かとアドバイスを求めた所、私が作ったロボットにも髭がある、大丈夫だと背中を押したと言う話がある(笑)ああ、確かにゴッドシグマの顔には凄い髭がありますね。考えようによってはライディーンにだって凄い顎鬚があるんでしょうし。そう言ったデザインをミード氏に見せて励ましたんでしょうね。
いつも新しい事を考え、尻込みせずにそれを実行しようとする豪腕、妥協を許さぬその根性。常に新しいアイデアをその脳内で転がし、実現しようとするその才能は30年経った今現在においても衰えておりません。今、玩具業界も崖っぷちに追い詰められている現状、村上氏はまた何かやってくれるのかも知れません。頑固一徹、玩具の神様。今後の村上氏をエクシは大いに応援したいと思います。
それではまた〜(+_+)ノシ