特撮コラム 仮面ライダークウガ その⑤

前回の紹介で9フォーム書きましたね。その他にもあるのがクウガの特徴です。これらの他に三形態もあるんですね。これは今までのライダーの中で、いやこれ以後に出てくるライダーの中でも最多であると思われます。因みに、スポンサーも出所も全然違う魔弾戦記リュウケンドーは今の所8形態。もう一つあるみたいな伏線が玩具にあったりしてちょっと興味深々です。


さて、前回で9フォームの上に更にまだありますよ。金の赤、ライジングマイティのライジングマイティキックが通用しなかったので、更なるパワーアップを雄介は決意します。ゴ階級中最強のゴ・ガドル・バに一蹴され入院してしまった雄介は、自ら心臓を止めて(アークルは本人の意思で身体機能を自由自在に操れる)椿医師に更なる電気ショックを受ける事を希望します。それにより、30秒という短い格フォームの変身時間は大幅に延長され、必殺のキックを行う時に黒の形態、アメイジングマイティに変化する事ができました。これはライジングマイティの強化版で、それ以後の究極の姿アルティメットフォームに繋がる形態です。片足でのキックは両足になり(ドロップキック?)その爆発の衝撃波は全て真上に行くようになります。極大の火柱。それは雄介がライジングマイティキックの弊害を自らの意思で修正・強化した、辺りに無駄な被害が出ない様にした技だと言えるでしょう。
黒の形態へ繋がる伏線はそれ以前からありました。究極の闇と古代リント文字で表された凄まじき戦士は、本来出てはならない形態です。以前、実質的な暴力によって殺害を行わず、血管から小さな針を刺して脳に至った時、巨大で凶悪な針に変化させるゴ階級の怪人ゴ・ジャラジ・ダ(ヤマアラシ種怪人)という敵が現れた時、雄介は怒りに我を忘れて闘った事がありました。その圧倒的な姿は暴君とも鬼神とも言えるべき存在で、雄介は自分の心が闇(怒り・憎しみ)の感情に捉われるような感覚を経験します。敵の未確認生命体0号、通称ダグバはこの究極の闇と同等の存在と碑文には表記されていました。心が闇に捉われた時に、雄介はダグバと同じになる。雄介は自分の心を厳しく律しながら敵と闘う事を心に決めるのです。
しかし第0号が出現すると、無差別に人間達を燃やし尽くします。超自然発火現象と呼ばれる能力で、プラズマによって手を触れずに辺りを火の海に出来るのです。前述のアメイジングマイティでも第0号には歯が立ちません。何しろ打撃出来ないのですから(ずりーなダグバ)。
雄介は自分で究極の姿になる事を決意し、豪雨の中今までお世話になった人達に今生の別れをするかの如く、回り始めます。それを約ニ話分掛けて行うのがとても印象的でした。そして最後の変身。一条に自分が暴走した時に、撃つのなら自分のベルトを撃って欲しいと言い残して。
「見ててください。俺の…変身」
第二話の激情とは逆の、今度は深く静かな物言いで雄介は変身していきます。
全身が黒に覆われ、動脈の様に走る金色の線。各所に禍々しい角が配置されたその姿はダグバと似ています。ダグバが無垢な白い悪魔だとすれば、クウガのアルティメットフォームは黒い悪魔だと言えるでしょう。しかし、その姿の眼は真っ赤な赤でした。本来の暴走した(闇の心に捉われた)アルティメットフォームは眼の部分が真っ黒なのですが、雄介は究極の闇の力を取り出しつつ、自己の意思を保ち続けたのです。白いダグバと黒いダグバ。果たしてその勝敗は如何に。


と、まあアメイジングが1とアルティメットの善と闇バージョンで12フォームという計算になります。凄いぞクウガレインボーマンだってびっくりだ!(笑)
そうそう、仮面ライダーなんだからバイクのこともちゃんと説明せねば。クウガのバイクは番組序盤では一般的な白バイ警察官に配備されるはずの試作機、トライチェイサー2000に乗ります。中盤になると、度重なる金属疲労とバイクで殺人を行うゴ階級のゴ・バダー・バ(バッタ種怪人)に壊されてしまったトライチェイサーの代わりにクウガ専用に製作されたビートチェイサーが貸与されます。街のど真ん中を颯爽とクウガの姿で走る雄介は正に仮面ライダーだったと言えるでしょう。
番組中盤以降になると警察組織から無償でバイクを貰える程雄介は警察組織と信頼関係を築いていきました。これは雄介の人の良さからだと言えますが、一条の手腕も勿論影響しています。クウガになった雄介と警察の連携で未確認生命体を追い詰める構成がとても印象的です。現代でもこれほど警察が頼りになる組織だといいのになぁ、と何度思った事か(笑)
クウガをサポートするのは警察だけではありません。化石から現代の物質を吸収して自己復元した装甲機ゴウラムの存在も忘れてはなりません。発掘されたパーツから様々な物質を取り込んでクウガの危機に駆けつけるゴウラムは本来馬の鎧として機能するクワガタ型のメカ。クワガタの形をしたそれはばらばらになって馬の各所に鎧として装着する様になっていたようですが、現代ではバイクの鎧として装着する事になったのです。二本の角を未確認生命体に向けてライダーブレイク(つまり轢くことね)する姿は圧倒的。トラックだって横倒しに(本当にトラック倒れてたよ!)しちゃいます。トライチェイサーに重なったゴウラムはトライゴウラム、ビートチェイサーの時はビートゴウラムと称されています。必殺技はトライゴウラムアタックもしくは、ビートゴウラムアタック。ライジング状態(ライジングビートゴウラム)で放った時もあります。その時に言った雄介の命名が「金のゴウラム合体ビートチェイサーボディアタック」だって。雄介、センス無さすぎ(笑)


さて、クウガ論もそろそろ終息。で色々考えさせられたなぁと思うことが多々あります。例えば、クウガの必殺技に「怪人に封印エネルギー叩き込む」等の表現が設定で多々見られます。しかし、封印と言う割には怪人が木っ端微塵になってしまう。これって封印って言うのか?と当初は思っていました。そして、古代リント族は現代人の先祖であることは確かだと思いますが、リント族の技術の集大成であるアークル(変身ベルト)は本当にリント独自の技術なのか?等色々です。他にも色々謎はあります。ベルトは何故雄介を選んだのかとかね。
クウガの必殺技で粉々になる怪人達。彼らは第一話時点で墓に埋葬されていました。第0号の力でその生命力を活性化され甦ったのです。さてここでおかしい事に気づきます。彼らは埋葬されていたのです。現代のクウガはその身体を粉々に粉砕しています。死体が残っているという事がまずおかしい。
古代の先代クウガはリント族の勇敢な若者の一人でした。巨大で凶悪なダグバの力は彼自身が封印の鍵となることで共に墳墓に封印されます。彼はグロンギの巣に入った時点で自らの生命を省みてはいなかったのです。封印する所の描写や、怪人達の墓。つまり、先代クウガグロンギ族を殺しきれなかったのだと言えるでしょう。これはリント族が平和な民なので、殺したり命を奪ったりするイメージが希薄だったからだと推測されます。しかし、現代人である雄介には長き冒険やその年齢までの経験からそういったイメージや行為を眼にしているので、凶悪な怪人達を封印するのではなく、この世から消し去るという考えで技を放っていたのです。ここが現代人と古代人の違い。バラのタトゥの女も「リントは変わったな」と言っている描写からそう推測されます。
アークルは何故雄介に反応したのか。これは前述した通り、暴力を振るうという行為が嫌いな人間、つまり平和な民であるリント族に近しい反応を雄介から感じたのだと言えるでしょう。雄介は古代リント族の考え方に酷似していながら、限りなく現代人であったとも考えられます。
アークルとグロンギの能力が酷似しているという事も見逃せません。これには実は不確定ですが、グロンギ族の腹部の装飾品にはアークルの中の賢者の石と同質の物が埋め込まれていると言われています。究極の闇であるダグバが最終形態だと考えられるのなら、どの怪人達もダグバになれる可能性がある。つまり、ダグバに挑む事が彼らのゲームの最終目標だと言うことです。考え様によっては、クウガというリントの戦士はグロンギにもなれる諸刃の剣だったと言えるでしょう。そんな戦士をリントが生み出すと言うのはかなりの抵抗があったと推測されます。碑文には究極の闇への警告が随所に出てくることから、リント族がクウガを生み出すと言う事は一族の危機(グロンギ族に蹂躙されること)から仕方なく行った苦肉の策だとも言えます。だからクウガ自身を生贄にして封印したとも言えるのではないでしょうか。むぅ…結構な平和の民じゃねーか。短編小説一本描けそうだな(笑)錬金術等でよく耳にする強力な力を秘めた賢者の石。それは人間に多大な力をもたらした、危険な代物だと言えるでしょう。


書いている内に結論が出るのは良いことです。こんな感じの文章だとイメージはしていましたが、結論が書いてる内に出てくるのは初めてです。
結局「仮面ライダークウガ」の劇場版は放映されることはありませんでした。何故なら五代雄介役のオダギリジョーが役をもうやらないって言ってしまったから。折角DVDの特典とかでもやることを示唆してたのにね。
オダギリジョーは本来俳優とかはあまりしたくなかったそうです。アメリカに留学し、監督コースを希望してたのに何故か間違えて俳優コースに行ってしまったうっかり者(笑)因みに中退してまだ席は残っていたりしてます。
さて、オダジョーがやらないと言った理由は、ま、要するに子供番組のヒーローと言う役が好きではない、むしろかなり嫌いだったからだそうです。その理由は恥ずかしいから、もしくは子供っぽいからだと思われますが、詳細は不明です。兎に角ファンタジーのような非科学的な世界や変身ヒーローが活躍する想像の世界を完全否定し、アダルトなドラマや現代に準じる作品の方が彼には魅力があったのだと思われます。
そして、映画をやるにしても彼でなければ多分誰がやっても五代雄介は演じれない、と当時の監督も思ったのだと思います。長きに渡りクウガの映画を行って欲しいとの署名運動まで起こりました。最近ではそれも沈静化しクウガの作品も風化しつつあります。しかし、このまま風化させて良い物かと思って今回のコラムを起こしました。皆さん、どうでしたか?


平成ライダーシリーズも今年でもう七作目。有名俳優を起用した「仮面ライダー響鬼」も失敗に終わり、東映は今度は「仮面ライダーカブト」を発表しました。視聴率はどうなっているかは分かりませんが、そんなに悪くはない作品だと思います。しかし、どの作品もクウガ程の力が入っているとは正直思えません。ぜひ今後のライダー達には頑張って欲しいと思っています。
…つーかバイクちゃんと乗ろうよ、クウガ以降の平成ライダーシリーズ! バイクに乗らない仮面ライダーはライダーじゃない! でもカブトは劇中で結構乗ってる方かな。でも劇場版の舞台が宇宙って…バイクいらないじゃん(笑)
それではまた〜。