ボトムズコラム(1983年〜1984年)その① メカ編

サンライズ作品「装甲騎兵ボトムズ」とはそれまでのロボットアニメ作品とは一線を画し、リアルロボットの最高峰とも呼ばれた名作です。
それまでのロボットアニメでは小さいロボット(搭乗出来るロボット、尚且つ命題となっている物限定)でも9mもの大きさがあり、現実には存在しない、作ろうにもでかすぎて作れない現実的でないものばかりでした。しかしこの作品の装甲騎兵、AT(アーマードトルーパー)は4mと言うコンパクトな高さで、物語中に主人公がロボットの腕を抱えたり、スクラップからパーツを集めて再生したりと、非常に現実味を帯びたロボットだと言えます。
余談だが、一昨年にこのATの代表的な機体であるスコープドッグをそのままの大きさで再現した鉄の造型作家さんがいました。でも、本人は別にアニメを見ていたわけでも何でもなく、ただ根性試しに作ってみたとの事。作っている間に何度も怪我をしてまで完成させた凄い根性の持ち主です。詳しくはここを見てね。これは後述します。
http://ironwork.jp/monkey_farm/botoms/botom-top.html
前述した通り、スクラップからパーツを集めて組み立てられるような簡易的な人型ロボットなので、それまでの作品と違うのは「使い捨て」だと言うこと。マジンガーZでは幾らマジンガーがやられても簡単には乗り捨てないでしょ? でもこの作品の機体はそこかしこにある量産品なので、主人公は躊躇せずに乗り捨てます。徹底的な兵器描写。それまでの作品はタイトルがそのロボットの命題になっているパターンが殆どなので、番組第一話でいきなりやられて乗り捨てる、なんて事は出来ないんですよ。「機動戦士ガンダム」は確かにそれまでの「ヒーローロボット」から「戦争道具としての一端」という転換を見事に果たした感がありますが、まだまだヒーロー性、英雄的な特別な機体という意味合いが抜け切っていない。しかし、この「装甲騎兵ボトムズ」ではヒーロー性を無視し、過酷な戦場で生き抜く為の徹底的な道具としての描写を描いていきます。外観は無骨な装甲板で出来た、かなり「カッコいい」と言う言葉とは程遠いフォルム。顔となる頭部はそれまでのロボットではヒーロー然とした表情と一応の目・鼻・口のような形をしたデザインでしたが、ATに必要な物は弾を弾く為の丸みを帯びた装甲とカメラのみ。当時のメカニカルデザイナー大河原邦男大先生(70年代から殆どのアニメメカはこの人が作ったと言っても過言ないではない)は「この作品が売れなかったらこの仕事辞めます」とまで言って企画書を通したという伝説があります。それほど作品への情熱が製作スタッフから滲み出ていた作品だったと言えるでしょう。
実際にこのロボットは兎に角デザイン的にカッコ悪い物でしたが、これが映像で動くと実に生き生きとしていました。
二足歩行と言えば、それまで歩くか走るかの選択肢以外出てこなかったのですが、このATの足の裏にはローラーが埋め込まれていて、それが高速で回転し火花を散らしながら(完全にローラーで浮いている状態ではないから)滑るように移動するのです。減速や止まるのはこれまた画期的で、人間で言えばくるぶしの部分に金属製の杭を装備し、それを地面に打ち込んでターンすると言うもの。ターンピックと呼ばれるそれを片方だけ打ち込んで、全力走行したらその場で回転ちゃうお間抜けさんに見えますが、その回転を利用して銃を撃ちっぱなしにすると脅威の360°回転攻撃が可能になります。集団戦では絶対に使っちゃ駄目だぞ?(笑)
ロボットと言うとガチで殴り合いは必須。しかし、工業用の機械等を見ればどう考えてもロボットがパンチをするのにはある一定の速さが無ければ出来ません。ATにはその格闘戦をする時に画期的な描写が用いられます。アームパンチ機構と呼ばれるそれは、工事用のコンクリート破砕用杭打ち機の油圧ブレーカーからヒントを得た物だと思われます。肘から上腕部に掛けて腕自体が伸縮するギミックを搭載し、尚且つその腕を火薬の力で打ち出すという物です。ATに握り拳を作らせ、対象物に拳を押し当てトリガーを引けば物凄いスピードで腕が射出される。腕自体はスプリングで戻るようになっており、パンチをした後は自動的に戻るという機構。分かりにくいかもしれませんが、ブローバック拳銃の動きに似ていると言った方が良いでしょうか。これは主に格闘戦の打撃や、障害物等の除去等に用いられ、宇宙空間では姿勢制御にも使われたことがあります。他にもこれと同じような機構で杭打ち器型も存在します。AT格闘戦で絶大なる必殺武器であるパイルバンカーと呼ばれるそれは、アームパンチと同じ火薬撃ち出し式で、装甲を突き抜いてATの搭乗員を刺し殺す武器です。怖い事考えるなぁ。
む、ちょっと書くことが多過ぎるので取り敢えずはここまで。
気が向いた時にまた書きます。それでは〜。


余談。
因みに作品タイトルであるボトムズとは、Vertical One-man Tank for Offence & Maneuver(攻撃と機動のための直立一人乗り戦車)の複数形(〜S)とされていますが、歩兵にとっては虐殺兵器であり、搭乗員にとっても死亡率の高い兵器である為「ボトムズ=最低(bottom)の野郎ども」とも取られています。このダブルミーニングがこのタイトルの肝ではありますが、実際にはファッションでの「ボトムス」の商標と被る為に前述のVから始まる英語にしたそうです。当初はスペルさえ決まっていなかったらしいですよ? エルメスララァ・スン専用モビルアーマーに商標が変わったのと同じかな(笑)未だにエルメスって呼ばせてもらえないらしいぜ? 映画「逆襲のシャア」でシャアの乗るモビルスーツサザビーというのもあるんだけど、これも1972年に設立し現在ではアフタヌーンティー等で知られる有名ファッションブランド会社サザビーリーグからも名称禁止の文句が来た。サンライズ並びにバンダイは1997年からずっと訴えられてきたけど、2004年には和解しているらしい。どうやって和解したかは知らないが、文句言われるくらいなら「イェルメス」とか「サザビィ」とかに名称変えればいいのにね(笑)