特撮コラム 東映スパイダーマン その②

スピードレーサーの山城拓也はある日、呼ばれるようなテレパシーを感じる。丁度その頃、宇宙から隕石らしき物が地球に飛来した。高名な宇宙学者である拓也の父、山城博士はその隕石の調査中に怪物に襲われ命を落としてしまう。その怪物こそモンスター教授率いる鉄十字団のマシーンベムと呼ばれる物であった。父の死を看取った拓也は仇を取る為に鉄十字団に挑むが、奮戦空しく谷底に突き落とされてしまう。実はその谷底こそスパイダー星人ガリアが幽閉されている場所でもあった。絶命しかかっていた拓也にスパイダーエキスが内臓されたスパイダーブレスレットを与え、ガリアは拓也の命を救う。
ガリアは過去にモンスター教授に故郷を全滅させられた事があり、地球までモンスター教授を追いかけたが返り討ちに遭う。戦国時代もの過去から底なしの洞窟に幽閉され続けていたガリアはすでに戦う力は残っていなかったが、全宇宙にテレパシーを発する事は出来た。そのテレパシーに応える事が出来た拓也はこの世界で唯一無二のガリアの親友となるのだった。
戦国時代に敗北したガリアは、モンスター教授に悪用されない為に宇宙戦艦マーベラーを教授の手の届かない銀河へと送った。そして、ガリアは拓也という新しい仲間を得て地球にマーベラーを呼び戻す。その宇宙戦艦こそ山城博士が調査しようとしていた隕石だったのだ。
ガリアの命は既に尽きかけていた。自分が持ち得る全てを拓也に託し、絶命するガリア。スパイダーブレスレットからスパイダープロテクターを取り出し身に纏う拓也は、父と、そして戦う力を与えてくれた親友ガリアの復讐を誓い、スパイダーマンとなって戦う事を決意する。
鉄十字団の横暴は止まらない。有名な科学者を拉致しては兵器開発を強要するモンスター教授。スパイダーマンになった拓也は、スパイダー感覚と呼ばれる超感覚で鉄十字団の動向を探りその犯罪を阻止すべく行動を開始する。幽閉された場所を突き止め科学者を救出。女幹部アマゾネスの前に颯爽と現れ名乗る拓也。
「地獄から来た男、スパイダーマン!」
人間離れした体力と回復力、そして自在に壁を登る能力とブレスレットから無限に精製される蜘蛛の糸で鉄十字団をいなし、次々と戦闘員ニンダーを倒していく。父を殺したマシーンベム、暴君竜すらその力に翻弄され、痺れを切らして巨大化する。50mを越す巨獣になった暴君竜にはさすがにスパイダーマンも劣勢。その時危機に陥った時にマーベラーを呼べとガリアに教えられていた。ブレスレットでマーベラーを呼び、巨大宇宙戦艦マーベラーが飛来。マーベラーはスパイダーマシンGP−7(車型飛行マシン)を射出しスパイダーマンを回収、マーベラーのコクピットに乗り込んだ拓也はマーベラーをレオパルドンへと変形させ、スーパーロボットレオパルドンを起動させる。

暴君竜の攻撃を物ともせず、敵へと突き進むレオパルドン。頭部のブーメラン型武装アークターンで敵を怯ませ、足から長剣を引き抜き、刃の部分にエネルギーを集中させ敵へと投げるその必殺技は絶対無敵のソードビッカー! ソードビッカーを受けた暴君竜は粉砕され、モンスター教授はこれからの作戦の支障となるスパイダーマンを抹殺する作戦を計画していくのだった。
初の勝利を収めた拓也は、殺された父と長きに渡って苦しめられたガリアの復讐を改めて誓う。いや復讐だけではない。鉄十字団がこの世にある限り苦しめられる人々がそこにいるのだ。拓也は打倒鉄十字団を胸に今後の戦いを切り抜けていく。戦え! スパイダーマン


っと言うわけで、日本版のスパイダーマンです。アメリカ版は確か学者を目指す学生でモテナイ君だったような気がしますが。日本版のスパイダーマンはスピードレーサーで彼女もいるけど無職なニートでした。両方共正体はうだつの上がらない青年と言う意味ではちょっと共通してるかも。
以後、拓也君はアマゾネスから何度もスパイダーマンではないかと言う嫌疑を掛けられますが、拓也君は必死に自分の正体を隠します。それこそ彼女に嫌われる寸前になる位の弱虫君を演じる姿が涙を誘います(笑)まあ正体ばれたら速攻で妹・弟を人質に取られるのが必至ですから。その必死さが結構見応えありでしたね。しかし、全銀河にテレパシーを送ったガリアは拓也を親友と勝手に呼んでる所が何とも理不尽な気がします。拓也君、命救われた時に洗脳されたんじゃないかと思いました(笑)
実質的には、スパイダーマンが自分の手で敵を倒した事が無いのがちょっと物足りなさを感じましたかね。いっつもソードビッカー!だし(笑)
そう言えばレオパルドン東映至上で唯一無比の絶対無敵なロボットだと言われています。何故かと言うと、実はドラマパートがかなり長かったせいか、巨大獣とロボットの戦いはカットで合成されているだけだったのです。これは初めのニ・三話位は一緒に撮っていたようですが、それ以降の戦闘シーンはバンクのみで構成、マシーンベムが巨大化したカットを何シーンか撮って後はレオパルドンの変形と必殺技でキメ。秒殺ロボットと言われているレオパルドンは実は使い回しのシーンで構成されていたと言うわけです。つまり、
マシーンベム出現→マーベラー飛来、レオパルドン登場→ソードビッカーでキメ
この「マシーンベム出現」の部分しか新しく撮られていない。後は全部バンクということなのです。時間が更に無い時は飛来したマーベラーのキャノン砲だけで倒しちゃう、なんてこともありましたっけ。変形する時間もないんかい!(笑)だから、必然的に瞬殺・秒殺になってしまったわけです。マシーンベムがレオパルドンに触れられた回数なんて、数えるほどしかなかったと思いますよ。対戦の最長時間が一分二十秒弱だって(笑)最強だね、レオパルドン。でも、最終回位はちゃんと戦おうよ、レオパルドン
まあこれは明らかに当時の玩具会社を意識してのカットなので、織り交ぜなきゃならないと言えばならないのでしょう。でも、この日本オリジナルの設定がアメコミファンからあんなに反響(主にクレーム)を呼ぶとは当時の制作スタッフも思わなかったのかもしれません。スゲー!俺達新しいことやってるよ!みたいな感じだったかも。何せ、特撮で巨大ロボットを主役として登場させるのは世界初(かも?)なのですから。


このレオパルドンの制作とその特撮スタッフはこの作品以降、戦隊シリーズ三作目の「バトルフィーバーJ」という作品も担当。当初戦隊シリーズ一作目と言われていた「バトルフィーバーJ」でしたが、それ以前の「ゴレンジャー」や「ジャッカー電撃隊」も同じ様なスタイルなので名実と共に「バトルフィーバーJ」は戦隊シリーズ三作目に列挙されました。五人の戦士、超巨大戦艦、そして戦闘ロボットという概念はここから始まり、現在までその伝統が踏襲されています。それと言うのも、この東映スパイダーマンのノウハウが生かされているからなのです。自分的には外国が何を言おうと関係ない。当のアメリカは戦隊物のコピー番組「パワーレンジャー」を作って大ヒットしている訳だし、正直どっちもどっちだと思うんですが。
スパイダーマン」という伝統ある作品を日本は冒涜した訳でも、馬鹿にしている訳でもありません。日本流のアレンジという物(関連商品の発売)をしなければ制作会社はやっていけないのです。アメリカと違って国土狭いしね。実際「パワーレンジャー」の収益は凄まじい物だと聞いています。そりゃアメリカ全国土で放映して玩具を販売したら日本の収益とは桁違いだよなそりゃ。しかも殆どの玩具の金型は日本からの流用だし。社会現象になるまで売れちまったコピーレンジャーの玩具の金型はきっとアメリカ人にとっちゃ札束の山に見えるのかもしれない。最近では一年ごとにコピー番組が放映されてるようですが、妙に撮影が豪奢(因みにロボットの特撮は日本のバンクを使用。そんなに着ぐるみ着たくないんか?)になって何か納得イカネー!! でも、バンダイアメリカは売る気満々らしいぜ!
マーベルとパワーレンジャー一緒にすんな!って言われる前にやめとこっと。
兎に角、こういったロボットヒーロー物の映像は日本が一番最初。こういった伝統芸能は世界に誇るべき物だとは思います。皆さんはどう思いますか? 
それではまた〜。