仮面ライダー龍騎 総評

2002年の作品です。ライダー同士で戦い合わせれば人気出るんじゃない? と言うコンセプトで作られた仮面ライダーでもあります。正直、ヒーロー同士が戦い合うのはあんまり好きじゃないのですが。粗筋はこんな感じ。
通信会社勤務のジャーナリスト、城戸真司は原因不明の行方不明者の取材をしていた時に不思議なカードケースを拾う。そのケースを拾った時から不可思議な現象が次々と彼の周りで巻き起こる。赤い龍の襲来や、不可思議な耳鳴り。そしてある日、一層強い耳鳴りが聞こえてきた時に真司は現実の世界とは別の世界に突如引き込まれる。そこは全て事物が逆に構成された世界、ミラーワールドだった。鏡の世界は全くの無人であったが、その代わりに異形の怪物が真司を襲う。絶対絶命の危機に晒された真司はバイクに乗った黒衣の騎士に助けられる。目の前で繰り広げられる騎士、仮面ライダーナイトと異形の怪物ミラーモンスターの戦い。この世界に来た時点で真司は黒衣のライダーの様な姿をしていたが、戦闘力は皆無であった。ライダーがモンスターに止めを刺すと、今度は赤い龍が襲撃。強力な炎で追い詰められる二人。更に自分の姿が崩れる様な前兆が起こる。ミラーワールドでのライダーの活動時間は9分55秒と制限されていたのだ。辛くも脱出する真司。
ミラーワールドに引き込まれた際に出会っていた二人の男女は秋山蓮、神崎優衣と名乗った。その出会いで真司はあるはずの無いミラーワールドとモンスターの存在を知る。ケースを拾った事で真司が偶然巻き込まれた事を知る二人。赤い龍は封印のカードを持つ事で退ける事が出来ると説明すると、二人は真司の元から去っていった。
思わぬ所から真相を知った真司。ミラーモンスターは人を捕食する事で力を得る。行方不明者は続出する事に黙っていられない真司は、再び二人と再会する。優衣の前で封印のカードを破り捨てることで自らの信念を示し、モンスターと契約する事で仮面ライダーとなる事を選ぶ真司。以前襲ってきた巨大な蜘蛛型のモンスターと戦っていた蓮、仮面ライダーナイトは復活した蜘蛛に苦戦を強いられていた。そこへ現れる赤い戦士。真司は自分を何度も襲っていた赤い龍ドラグレッダーと契約、仮面ライダー龍騎となり脅威的な力で蜘蛛型モンスターを屠る。助けられたナイトだったが、突如龍騎に剣を向け襲ってきた。脅威的な力を見せ付けた龍騎を危険視した為だ。訳も分からずに応戦する真司。優衣の仲裁で何とか戦いを止める二人だったが、真司には疑問が残った。何故人間同士で争うのかと問い詰める真司。蓮は「ライダー同士共存は出来ない」と応じると、悪びれもせずに去っていった。
夜道をバイクでひた走る真司は再びモンスターの襲来を知らせる耳鳴りを聞く。鏡に映ったものはモンスターではなく人間だった。優衣の兄でもある神崎士郎がこの男だった。士郎は「最後に生き残るライダーはただ一人、ライダーを倒せ」と命じると、その姿は消えていく。
後に真司が知った事実は、ケースであるカードデッキとライダーシステムを作ったのは士郎であり、モンスターを倒し、ライダーをも倒してただ一人まで生き残った者にはどんな願いも適えられる力が手に入ると言う事だった。しかし、真司はそんな力を欲さず、ただモンスターに刈り取られる命を救っていきたいと願う。13人ものライダーが存在し、或る者は不治の病を治し不老不死を得たいと願う者、ただ戦いを求めて殺戮を行う者、不毛な戦いを止めさせようと行動する者、幸せになりたいと願う者、英雄になりたいと願う者、ゲーム感覚でバトルを行う者と様々であった。そんな中、秋山蓮は危篤状態の恋人を救いたいと願う者であった。様々な思惑が存在する中で、真司はライダー同士の戦いを止めようと行動するが、それが本当にライダー達の為になるのかと苦悩する。いつも共に行動する蓮でさえ、恋人の為と思っても人を殺すと言う非情さを持つ事が出来ない。戦いの中で脱落していくライダー達を目の当たりにして、二人は常に答えを導きだしたいが為に戦う。戦わなければ生き残れないのだから!


まさに仮面ライダー版「バトルロワイヤル」ってな感じですか。因みに戦いを放棄してカードデッキを破棄したりすると、契約モンスターに食べられると言う非情な特典つき。ライダーになった者は逃げられずに様々な葛藤を抱えて戦い合うと言った物語でした。久々に改めて見てみましたが、物語の進行が遅かったり早かったりしてびっくり。大体物語の進みが遅い時は井上脚本だったりしますけど、総評を言えば単純に大人向けな物語を楽しめたと言えます。TV放送中に劇場版が放映されたり、視聴者の電話で物語の進行を決めるTVスペシャルが放送されたりして凄いブレイクっぷりを見せてくれたと言えるでしょうね。最終回一話前で主人公であるはずの城戸真司がモンスターから女の子をかばう事で死んでしまうと言うサプライズもあって、エクシにとっては忘れられない一シーンであります。このシーンは何度見ても泣けるよぅ。
二人のイケメン(って言葉はあんまり好きじゃないけど)主人公、城戸真司役は今映画等で活躍中の須賀貴匡さん。今年放映される「天国からのラブレター」主役に抜擢される程の実力の持ち主。これは以前コラムにした光市母子殺害事件をモデルにした映画らしいですね。ちょっと期待。秋山蓮役の松田悟志さんも俳優・歌手としてTVや映画で活躍中です。
TV版では10人だけしか出ていませんが、後の三人はTVスペシャルや劇場版で完全なパラレルとして出てきます。黒田アーサーも悪役ライダーとして出演し、史上初の女性ライダーとして仮面ライダーファムを加藤夏希が熱演したりと様々な試みが成された作品でもあるのです。昭和ライダー派な自分としては名乗りもポージングもせず、ただ己の欲望の為に戦い合うこの作品がイマイチ気に入らなかったのですが、改めて見るとちょっと評価も変わってきますね。リアルな人間像と言うレベルにはちょっと届かないでしょうけど、逃げ場を登場人物に与える事が全く無い、物語自体がキャラクターを追い詰めていく構成は見事だったと言えるでしょう。と言うか、その突き抜けっぷりに脱帽しますね。誰が考えたんだこの企画って感じで。やっぱりバトロワがショッキング過ぎたのかもね。これを参考にして有名PCゲームFate/stay nightが発売されたりしてますし。皆生き残りゲーム好きだよなぁ。
劇中で黒田アーサー曰く、ライダーバトルとは人生の縮図だとの事。人生と言う道程が生き残りを掛けたバトルだと言っているのです。そんな余りにも重いテーマを仮面ライダーと言うヒーロー番組で扱った事こそが驚き。子供をかばって命を落とした真の英雄である城戸真司、仮面ライダー龍騎こそがそんな世情とはアンチな位置づけになっていると言う事を突きつけられた事実が厳然とそこにあると思えるのです。強烈なアンチテーゼ、それが仮面ライダー龍騎の魅力だと言えるでしょう。別に仮面ライダーじゃなくてもいいじゃんとの意見もありますが、孤独でいつも葛藤を抱える戦士という意味で考えれば龍騎も立派な仮面ライダーと言えるのではないでしょうか。とかこじつけてみたりして(笑)
因みに主題歌「Alive A Life」を歌っているのは松本梨香さん。ポケモンで主題歌や主人公の声やっているコノ人が何で!? と思ったら、ああ、なるほど。モンスター繋がりね。ミラモン、ゲットだぜ! 安易だなぁ。
最後にファイナルベント集を貼ってみる。きただにひろしの歌は最高だね。アメリカで「KAMENRIDRE RYUKI」のタイトルでリバイバルも決定したそうです。吹き替え版見て見たいなあ。
http://www.youtube.com/watch?v=nJtiJgtMAeg
それではまた〜。