第22話 特攻メカ・ブロリラーの挑戦

地球側とアルデバロンの戦いは泥沼と化し、地球人の死傷者は目を覆う数となっていた。科学力に秀でたアルデバロンにとってもそれは同様で、既に軍を維持するのが困難な程に死者は増え続けている。死亡数五百万人。訓練された兵士の半数を失ったアルゴルは、兵員の増強をする為に冷凍冬眠されていた二千万の兵士を目覚めさせる事を決定する。冷凍冬眠の管理局長はそれに従ったが、食糧局は難色を示した。人員の食糧維持が出来なくなる。だがアフロディアは現在要塞内にいる民間人を全て冷凍冬眠させる事でそれを補う。これにより、冷凍冬眠している民間人は6千万人から7千万人へと増え、生存する兵士と合わせれば現在戦える兵士は二千五百万人となった。結果、要塞内の人口は通常時より五百万人増える事になり、食糧は食糧局の装置をフル稼働させる事で現状を維持しようとする。しかしそれは短期間の話であり、他にも無理が出てくるかも知れない。多少の無理を承知でアフロディアは増員策を決定させるのだった。
その政策に不満をあげたのは移民局の局長である。要塞内の人間が全て軍人になり、主導権を握られる事に恐れを抱いたのだ。アフロディアは問答無用と銃で脅すが、抵抗した事で追随していた親衛隊隊長のラトピが局長を射殺する。彼はアフロディアの付き人リスルと恋仲であった。ラトピは彼女に近づく為に親衛隊の隊長となったのだ。しかし戦時中である現在、更にリスルが総司令官の付き人であると言う事実が、関係を秘する要因となっていた。
アフロディアがいない間の二人の時間。民間人であるリスルも冷凍冬眠を待つ身であった。ラトピにとっては彼女が戦乱に巻き込まれる危険性が少なくなるので安心だと言う。しばしの別れの為に二人は自分が大事にしている物を交換する。ラトピは親衛隊隊長に任命された時の勲章を、リスルは胸のペンダントを。
だが二人の関係は無残にも引き裂かれる事になる。アルゴル要塞のエネルギー維持の為に、七千万人の民間人は完全冷凍冬眠しなければならないと言うのだ。簡易冷凍冬眠はいつでも眠り目覚めさせる事が出来るが、体調コントロールの為にエネルギーを消費する。対して完全冷凍冬眠は殆どエネルギーを消費しないが、デメリットとして対象者は100年間の冷凍冬眠を強いられる事になる。そしてそれは二人の永遠の別れを意味していた。
二人は全てを投げ打って逃亡の道を選んだ。待機している宇宙船を強奪しようとするラトピだったが、アフロディアに察知され軟禁されてしまう。ラトピに二人の死刑決定が伝えられるが、一つだけリスルが助かる方法があると言う。未完成の実験特攻兵器、ブロリラーに乗ってバルディオスを倒す事が条件だった。特攻と言うだけあって、反光波爆弾を満載されたそのメカに乗る事は死を意味したが、リスルの為なら被験者になる事を拒まないラトピ。
かくしてアルデバロンの侵略行動に迎撃に出たバルディオスを目標にしてブロリラーが発進した。ブロリラーはラトピの脳波通りに対象をロックし、体当たりを敢行する。その速力はバルディオスをも上回り、見事に命中する。最後の一瞬、リスルの幸せを願うラトピだったが、反光波爆弾の不発により爆発はしなかった。残骸の中で奇跡的に生存したラトピはBFSへと連行され治療と共に脳波探査を受ける。マリン達は彼がアルデバロンを裏切った要因を知る事は出来たが、アルゴルの位置は判明しなかった。地球でも処刑される身になると思っていたラトピだったが、マリンは逆に彼に協力を要請する。ラトピは、リスル救出を条件にアルゴルへの案内を約束した。
ラトピの案内でアルゴルへと赴くバルディオス。亜空間航路を進む途上、再びあの特攻兵器が襲い掛かってきた。現空間へと復帰してもまだ対象を追い続ける。それを止めるには直接メカ内に入って被験者を救出すればいい。マリンとラトピはバルディオスを追い続けるブロリラーに取り付き内部へと侵入した。しかしその被験者となっていたのは……リスルだった。彼女はラトピを救う事を条件に兵器内に組み込まれてしまったのだ。
「ひどい……ひどい話だ!」
それはアフロディアの命ではなくガットラーの仕業であった。彼女をマシンから救出する為に、拘束カプセルを破壊しようとする二人。しかしどんな機器でも、銃ですらカプセルを壊す事が出来ない。未だブロリラーがバルディオスを爆破対象としてロックしてはいなかったが、それが自動的に行われるのにもう時間が無かった。ラトピはマリンにバルディオスへ戻る様に言う。二人だけにして欲しい。諦めきれないマリンは生き残る努力をするべきだと反論するが、そこへラトピの拳が飛ぶ。気絶したマリンをバルディオスへと送り出し、ラトピとリスルは反転して宇宙の彼方へと飛んだ。バルディプライズ内で目覚めたマリンは反転するブロリラーを見て絶句する。
二人は見つめ合い、満ち足りた笑みで宇宙の闇を飛ぶ。そして輝く光が闇を照らした。救えなかった憤りに歯噛みし、拳を握り締めるマリン。彼らの、二人だけの世界を切望する願いは確かに叶えられたのだ。
形見である勲章とペンダントを前に呆然とするアフロディア。彼女の政策と鉄の戒律が二人の死を招いた事は確かだったが、15年も仕えていた付き人と、信頼する部下を同時に失った事に少なからず衝撃を受けていた。様々な思惑を巻き込んで、戦いは新たなる局面を迎える事となる。

エクシ感想……逃亡して、捕らえられた直後に「彼女は私の付き人だから冬眠はさせないぞ?」とか言われたらショックだろうなあ、ラトピ。別に「貴女も冬眠するのよ」とは一言も言われてないはずなんだけどな。もしくはリスルが「私はアフロディア様の付き人です。冷凍冬眠は受けません。一生お仕えいたします!」とか言えば総司令官権限で冬眠は免れたんじゃないかとか思ったり。アフロディアだって彼女にいなくなられては困るだろうし。まあそんな事言ったらこの話が始まらないから。叶えられないラブロマンスはバルディオスのもう一つの命題だと思うので素直に受け止めましょう。あ、考えてみたらラトピが地球を早めに征服して、その後完全冷凍冬眠受ければいいんじゃね? 誤差一年位で。とか思うなってば(笑)
ラトピの声優は古川登志夫さん。アルデバロンなのにいい役でしたね。そう言えばこの回でようやくアルゴルの総人口が判明しました。惑星移民で飛び立った時に一億人いたんですね。知らなかったわー。
15年仕えてきたと言うリスル。アフロディアと同年代だとすると、アフロが10歳の頃からずっと従ってきた事になりますね。ガットラーの命とは言え、止めろよアフロディア(怒)と言う感じで今日はここまで。
それではまた〜(+¥+)ノシ