第24話 ガットラー暗殺計画

今日もバルディオスは地球を守る為に戦い、ガットラー達の野望を挫いていく。オリバーと雷太はいつ果てるとも知れない戦いに苛立ちを感じていた。そんな二人に今は耐える様にマリンが諭す。ガットラーは力で総統になった男、人の心を掴んで指導者になった訳ではない。いつかきっと内部に綻びが生じて自滅していくだろうと。
同様にS-1星人達にもいつまでも地球を占領出来ないと言う苛立ちがあった。兵士達の士気も低下しつつある。既に故郷の星を飛び立ってから一年が過ぎようとしている現在、幹部のジョブとデレリはS-1星出発一周年の記念式典を開催する様にガットラーに進言する。普段総統であるガットラーが一般兵の前に顔を出すこと等殆ど無い。士気の高揚の為に兵士達へ労いの言葉を述べる。これはガットラーにとっても必要な事だと思い、式典の準備を二人に命じる。しかしそれに異を唱えるのはアフロディアだ。戦時中である現在で祭り等必要ない。だがそれよりもガットラーが多くの兵士の前に姿を現す事が問題だと思っていた。不穏分子が彼の命を狙う危険性は十分にあるからだ。しかしガットラーは全く臆さない。戦闘司令官が戦いの事を考えるのと同じく、総統は兵の事を考えねばならないと逆に諭すのであった。
私室に戻って休んでいるアフロディアに発信元不明の通信が入り込んだ。ガットラー暗殺の計画あり。詳細は都市BX地点にて話す、と言う内容だ。秘密裏に一人でと言う条件から罠の臭いを感じるアフロディア。しかし総統の危険を僅かでも少なくするのが自分の務めだと信じて目的地に向かう。出立の際、信頼する側近に自分が式典にいなかったら手紙を総統に渡す様に指示する。エアカーを自動から手動操縦へと切り替えた時、亜空間都市は夜を迎えた。要塞内に住む人間達の為に自動的に環境を整えるシステム。しかしそれが狙撃兵の存在を覆い隠した。エアカーのエンジンを撃ち抜かれ、壁との激突でアフロディアは気絶してしまう。
気がつくと暗い部屋、その中央にあるベッドに寝かされていた。傍らには狙撃銃を持った長髪の男がいた。その精悍な顔つき、士官学校で同期のカイザーである。銃の射撃がトップの男、と言う認識しかアフロディアには無かったが、彼にとってアフロディアは特別な存在だった。カイザーは何度もアプローチしたが、優秀な軍人になる為に彼女は一切の誘いを無視していたのだ。そんな男がガットラーの暗殺を試みようとしている。総統がいなくなれば彼女が危険に晒される。それを憂慮していち早く拉致したのだ。
カイザーは彼女に仲間になる様説得するが、一向に聞き入れない。ガットラーはアフロディアにとって父であり、兄であり優秀な軍人だ。13歳の時彼女は事故で両親を亡くし、弟のミランと共に孤児となっていた処を彼は助けてくれた。我が子の様に二人を育て、接してくれた。だからそれに応える為に優秀な軍人を目指したのだ。そんなガットラーを裏切る事など出来るはずも無かった。だがカイザーは反論する。12年前、ガットラーが26歳の時、彼はS-1星軍最高司令官の後任に抜擢され出世街道を歩んだ。その為にはどんな汚い事でも行った非情の鬼であると。そして当時まことしやかな噂が流れた。前任の最高司令官は事故に見せかけて殺されたのだと。その最高司令官こそアフロディアの父である。そんな事実をカイザーはアフロディアに突きつけた。
「嘘だ! 総統はそんな人ではない!」
だが、そう言った自分の言葉がいかに脆いか彼女は知っている。S-1星から出立した時、マリンの認識票で彼の父と皇帝を謀殺する事に、彼はためらい無く許可を出した。それ以前に彼の命で反逆者を幾人も殺してきた。抵抗運動を行った学院を一つ丸ごと潰した事もある。いつしか彼女はガットラーの尖兵となり、殺される側に回る者の事等考えもしなくなってしまったのだ。そんなアフロディアが実は最初に殺される側になっていた。カイザーはそんな彼女を篭に閉じ込められた鳥と思い、ガットラーから解放してやろうと思っていた。しかし例え事実を突きつけられようとも彼女はガットラーを守る気でいる。そんなアフロディアにカイザーは睡眠ガスを噴きつけ、傍らに式典の中継テレビを設置して監禁する。彼女にガットラーの死を見せることで目を覚めさせようとしていたのだ。
式典数時間前となってもアフロディアの姿が見えない。ガットラーはアフロディアの側近から前もって渡された手紙を見た。暗殺計画がある事を示唆する手紙の内容だ。だが彼は式典を中止するなど考えもしなかった。例え命を狙われようとも、総統の役目を果たす。側近はその姿に感服し、彼の護衛を勤める事に誇りを持つのだった。
睡眠ガスの効力が切れ、気づいた時には式典開催の間際であった。自分の手紙を見ても思いとどまらなかったのか。カイザーなら狙い違わず総統の命を射抜くだろう。まだ間に合うと思う彼女は、靴底とベルトのバックルから解体式の簡易銃を取り出し牢屋から脱出する。それをカイザーの部下が追う。次々と撃ち倒すが簡易式の銃はエネルギーが数発しかない。握り手の部分が爆薬となっているので、弾切れと同時にスイッチを入れ敵の群れに投げて爆発させた。丸腰になってもベルトを腰から抜いて鞭の様に振り回し、敵を倒していく。エアカーを奪い逃走するも、まだ彼らは追ってきた。銃で肩を撃ちぬかれ、ボロボロになりながらも式典を目指すアフロディア。
丁度その頃、カイザーは演説台の左後方にある排気口に息を潜めていた。金網越しにライフルで狙いをつける。後はガットラーが来るのを待つばかりであった。総統が舞台に上がると、会場内にガットラーコールが鳴る。非道と呼ばれながらも、彼は未だ兵士達にとって英雄なのだ。両手をあげそれに応えるガットラー。そして演説台についた時、カイザーは狙いを慎重に定め息を殺して引き金を絞ろうとする。その時、会場のガラスをぶち破って一台のエアカーが突っ込んできた。アフロディアが到着したのだ。エアカーをテロリストだと思った側近は、咄嗟に身を挺して総統を庇う。ガットラーと側近の立ち位置が変わり、トリガーを引き絞った時には総統ではなく側近を撃ち抜いてしまうカイザー。狙撃は失敗した。しかしそれでも諦めきれないカイザーはライフルを携え排気口から躍り出てガットラーに銃を突きつける。割って入るアフロディアだったが、彼女をどかせて総統は臆さずにカイザーに迫る。誰の命で自分を狙ったのかと。その眼光に気圧されるカイザー。一瞬の睨み合いの後、カイザーがライフルを構え撃とうとするが、止めたのは親衛隊の護衛だった。肩を射抜かれ動く事が出来ないカイザーは更に詰問される。それを撃ち抜いたのはジョブであった。暗殺者を殺せと。しかし、その行為は間違いなく口止めである。
「裏切ったな……ジョブ! デレリ!」
カイザーの最後の言葉で暗殺を命じた者が判明する。彼のライフルで二人を問答無用に撃ち抜くアフロディア。自分の役目を果たしたと思う彼女は安堵するが、負傷の影響で昏倒してしまう。
医務室で目覚めたのは三日経った後であった。アフロディアはガットラーの下へと赴き休養を与えてくれた事に感謝の意を述べた。が、その手には銃が握られていた。13年前、自分の両親を殺した事は本当かと。彼女は真実を知りたいと言う思いと、総統を尊敬していたいと言う気持ちがない交ぜになり、最早どうしていいか判らなくなっていたのだ。目に涙を浮かべ、彼女は司令官ではなく一人の女性になっていた。
「撃ちたければ撃て。だがお前にわしが撃てるか?」
彼は肯定も否定もしなかったが、その言葉こそ返答だった。そんなガットラーの言葉を聞きアフロディアは銃を自然に取り落とす。撃てるはずが無い。もし撃てば、自分の今までの行動や人生が無になってしまうからだ。そこへBFSが行動を開始したとの報が鳴る。
アフロディア、もう二度と涙を見せるな。お前は戦闘司令官だ。それを忘れるな!」
強い語調で激励するガットラー。アフロディアはその言葉に胸を張って応える。この事件以降、アフロディアの陣頭指揮はますます苛烈を極めていく。バルディオスを見つめる鋭い眼に、もう涙の跡は無い。

エクシ感想……敵側であるアフロディア達に焦点を置いた珍しい回。この話で彼女の生い立ちなどが判明します。そう言えば前回のリスルは15年間付き人をしていたと言う事だけど、多分ガットラーに引き取られた際にアフロディアの家とか財産とか丸ごとガットラーが搾取した可能性あり(笑)あんな鬼の傍にいたら平常の感覚なんて無くなっちゃうんだろうなあとか思ったり。それでも彼女の罪は許されざるものばかりですが。過去に思いを寄せるより、未来を目指して! とかじゃなくて、もう止まれなくなった暴走列車と言う表現が的確ですね。その列車は鳥篭に覆われている訳ね。カイザーもいい事言うなあ。カイザー役は既にお亡くなりになっている曽我部和行さん。これも悪役側とは思えないキャスティングですね。因みに撃ち殺された側近は広瀬正志さんだったりする。こんなチョイ役で殺されちゃうなんて……(泣)しかしこのアニメの女性キャラは何でモノローグで自分の年齢を言うかなあ(笑)と言う感じで今日はここまでっ。
それではまた〜(I¥I)ノシ