第27話 私が信じたスパイ

父バード国王の招きでジェミーはレニア国に赴き父子の対面を久しぶりに果たしていた。母と死に別れ、父を知らずに育ったジェミーにとって、改めて家族の絆を感じ取る事が出来たが、仲間の事や地球を守る任務を考えると早々長居もしてはいられなかった。バルディオスのパワーアップ以来、ここ暫くアルデバロンはなりを潜めている。単身バルコプターで帰還すると言うジェミーに用心の為、リビラの丘にマリン達を迎えに出す月影。
迎えに行く為に出撃の準備をする最中、アルデバロンの襲撃が報じられる。場所はコーンウォール地帯、つまりジェミーが通り掛かる場所だ。三人は急ぎバルディオスへとチャージアップし目的地へと急行するが、突如現れた赤い人型巨大メカアクーダイカンに行く手を阻まれる。分銅型武器バルディクラスターやパルサーベルで攻撃するも、何故か攻撃が全く当たらない。メカに構わずに進もうとすれば即刻阻まれる。アクーダイカンはバルディオスの動きから攻撃の先読みが出来る超反応ロボットなのだ。今までアルデバロンの襲撃が無かったのは、このメカを製造する為だったのだ。ジェミーの身やコーンウォールの住民が危ないと言うのに、マリン達は足止めされ救援に駆け付ける事が出来ない。エネルギー切れで撤退を余儀なくされるバルディオス
そしてジェミーのいる場所ではアルデバロンコマンドの容赦の無い殺戮が繰り返されていた。戦車隊で住民を砲撃し、捕えた人々は処刑場で銃殺される。ジェミーもそれを待つばかりの身となった。目隠しや余りの恐怖に倒れこむジェミー。無理矢理立たされ、再び銃が向けられようとした時、制止の声が轟く。戦車隊隊長のロマンである。彼はジェミーを見て即刻処刑を中止する。
廃墟の中で目覚めたジェミー。自分は銃殺されたのではと思った時、暗がりから先程彼女を助けたロマンが現れる。ロマンはBFSの隊員達のデータを熟知していて、処刑場にいたジェミーだけを処刑対象から故意に外したのだ。没収した銃をジェミーに返す彼は、虐殺を行うアルデバロンに憤りを感じ、BFSの仲間にして欲しいとジェミーに頼む。簡単には信じる事が出来ないジェミーだったが、妹をアフロディアに反逆罪で殺された事を話した。そして、その妹こそジェミーに生き写しだったのだ。彼の真摯さにジェミーは少なからず心を動かされる。
BFSでは巨大メカの対抗策を思案していた。アクーダイカンはバルディオスの動きに合わせて攻撃の一手先を読む超反応ロボットである事がクインシュタインから説明されるが、その対抗策は今の所無く、コーンウォール地帯はほぼ壊滅したと言う結果だけが残る。ジェミーの生存も絶望的ではあったが、彼女の生死が確認されるまで合流地点で待機する以外にマリン達に出来る行動はなかった。
夜の闇を待って脱出を行うジェミーとロマン。ロマンは彼女にお守りになるようにと、妹の写真が入ったロケットを手渡す。その写真には確かにジェミーと瓜二つの女性が写っている。未だロマンを信用する事が出来ないジェミーに信じあわなければ脱出は難しいと諭す。アルデバロンの戦車を奪い追っ手となる同じ戦車を次々と破壊して脱出行は始まった。衛兵がロマンの裏切りをアフロディアに報告するが、全てを悟った様に追撃を指示する。その表情には何故か笑みが浮かんでいた。
戦車で逃走する二人だったが、透明円盤隊に攻撃され動きを阻まれる。戦車を捨てジャングルの中を走る。密林を無差別に攻撃する透明円盤が木々を薙ぎ倒し、追撃する兵士の銃撃に翻弄される二人。激しい銃火の中でジェミーが疲れきった様に諦めるが、ロマンは希望を捨てなかった。彼女を抱きかかえてでも逃走するロマンにいつしか疑惑の心が晴れていく。川のほとりで水を汲んでくれる。自分の身を省みずに逃走を手助けしてくれる。何故そこまでと思うジェミーだが、自分が妹の生き写しなら無理も無い。好青年とも言える彼の行動にいつしかジェミーは心惹かれていく。そんな時追撃する兵士に見つかった。自分が銃を構える前に次々とアルデコマンドを撃ち倒すロマン。しかし狙撃兵の一撃が彼の肩を射抜く。取り落とした銃でジェミーは狙撃兵を撃つ。その同胞を殺したと言う行為に彼の決意は変わらない事をジェミーは悟った。彼の行動を全て信用し、救援のバルディオスとの合流地点をロマンに話すのだった。
国境地帯、リビラの丘でジェミーを待つ三人に突然の襲撃。何故この場所にバルディオスがいる事が判ったのか。亜空間から現出したアクーダイカンを迎撃しようとするバルディオスだったが、先読みをするメカに苦戦する。長官とクインシュタインの言葉を思い出すマリンは、このメカがバルディオスだけに反応して先読みすると推測、三機に分離しての波状攻撃を開始した。バルディオスにとっては強敵だが、三大メカの同時攻撃にアクーダイカンは無力であった。ボロボロになって動きを止めた敵メカに、即座にチャージアップしたバルディオスの亜空間ビームが弾ける。轟音と共にアクーダイカンは消滅した。
敵メカを撃破した三人はロマンと共に国境を脱出してきたジェミーをバルディオスのセンサーで発見する。敵であるロマンを初めは警戒する雷太とオリバーだったが、ジェミー救出に協力してくれた事で全面的に信用する。それだけジェミーの生存は絶望的だったのだ。しかしマリン一人が疑惑の眼差しを投げ掛ける。握手を求めようと近づくロマンに、マリンは銃撃で応えた。即刻ロマンを射殺したマリンにジェミーは非難の限りを浴びせる。ジェミーの首に掛けられたロケットを引き千切り、ロマンの死体に投げ捨てる。マリンを慕っていたジェミーは彼がこの時非情の鬼と化した様な気がした。何も言わずにバルディオスへと戻るマリンに雷太とオリバーも抗議する。が、その時投げ捨てられ、開かれたロケットの中から精密な機械が覗く。明らかにそれは送信機であった。このロケットのせいでマリン達の居場所が敵に筒抜けだったのだ。
マリンはロマンを信頼していたジェミーの心を、わざと傷つかせない様に悪役を演じた。自分だけが冷酷に、容赦なく敵を討ち倒す復讐者であると。そんなマリンの後姿をジェミーは感謝の意を表して追い掛けていくのだった。

エクシ感想……前回、折角場所が判明したBFS基地の所在を探る為に改めてスパイを送り込むアフロディアの作戦。その為だけに多大な費用を用いたこの作戦も、マリンの一撃で全てがパーです。結局移動基地では所在を確認しても意味がない。いつでも場所を報告出来るスパイが必要だったと言う事ですね。でも人的被害はさほどでもない。ロマンが撃った銃は多分パラライザーですし、その銃を拾って撃ったジェミーの銃撃も兵士の命を奪って無いと思われます。そこら辺の説明がちょっと不足しているみたいです。つまり敵軍はロマンとアクーダイカンのパイロットしか死んでないと思います。因みに地球側はコーンウォール地帯の人々は全滅(泣)捕虜がいるかも知れない状況で、ジェミーそこで抜け出しちゃいかんだろ、とか思うんですが。まあ脱出する時には皆殺しになっていたかも知れませんけどね。と言う感じで今日はここまで。
それではまた〜(L_L)ノシ