明日を救えないバルディオス 後編

ガットラー「わしが許せぬなら来い!」

前回の続き〜。えーと何だっけ。そうそう、バルディオスね。

取り敢えず「宇宙戦士バルディオス」は39話までは企画されていたんですな。それを何か(定説は野村トーイの玩具売上不振という事になっている)原因不明の理由で打ち切りにされてしまいましたよ。何故か。あー、今日も長くなりそうだ。

最後までの粗筋を簡単に言うと、ぶっちゃけマリンの故郷は地球の遠い未来なんです。一話でワープをしたつもりが、どうやらタイムスリップしてしまったようで。しかし、それをお互いの陣営は知りながら戦います。失ったものが多すぎるから。止まれなくなっているわけです。そして両者攻防の末、核ミサイルは発射され地球は汚染されてしまいます。だってそうならなければS-1星にはならないから。そうしようとは思ってないんですよ?お互い。因みに発射したのはガットラーですがね(笑)それも事故で。

両者とも辛うじて生き残るが戦力はゼロ。ガットラーも残すは冷凍冬眠したS-1星人コールドカプセル船のみ。マリンは一人ガットラーと決着をつけに衛星軌道上の移民船に向かう。そして憎き宿敵に銃を突きつけるマリン。しかしガットラーは自分が死ねばこのS-1住民が死に絶える(すでに操船できる人間がガットラー一人だけだから)という。マリンにそんなことは出来なかった。憤慨し殴りかかるマリン。しかしガットラーはS-1星の軍部でボクシングチャンピオンであったことがあるのだ(笑)体格差もありマリンは歯が立たない。冷静さを失っているマリンにガットラーはまた別の星に旅立つと言う。納得いかないマリンであったが、住民(それもほぼ民間人)を絶滅させるわけにはいかない。見逃す以外に選択肢はなかった。
ガットラーが旅立ち、帰ってきた彼は汚染が徐々に広がっていく地球を見て涙し、肩を落とす。今まで共に戦ってきた戦友や宿敵たちが目蓋に浮かぶ。傍らには、何故かガットラーの紋章が入った古代の遺跡がある。それにも気づかず、赤い空に覆われた砂浜をいつまでも歩いていくマリンをバックに物語は終幕する。
ひでーなこれ・・・なるほど、サブタイが「永遠への旅立ち」だ。嫌な永久ループだなぁ。つかガットラーのことかよ!(笑)

それでだ。写真でもあるように資料本などではすでにセル画もほぼ出来ていていた(存在するはずの無い最終回のセル画が資料にある)と言う話だ。なのに打ち切りにされた。それも実質八話分も。最近になって打ち切りの実質的な理由を当時の脚本家が語っている。ある権力者のツルの一声、だそうだ。興味のある人は見てみてほしい。 
ttp://www.style.fm/as/05_column/shudo31.shtml
その御前様とやらがほぼ強引に行ったこの打ち切りだが、その根本の理由はこの作品のテーマからではないかと私は思う。それは核によって放射能汚染された地球の未来。当時にしても、その前からでも、それ以降でもアニメや特撮が乱立する中、核によって放射能汚染された地球の姿というリアルなビジュアルを描いた作品は、実はあんまりどころか全く無い。自由度が狭まってしまうとか、悲惨なストーリーになってしまうからだとか色々あると思うが、核ミサイルが発射されこうなってしまいました、というのは実はバルディオスだけだ。「宇宙戦艦ヤマト」は汚染された地球をイスカンダルにいってコスモクリーナーを持ってきて救うと言う話だが、あれは実質的に言えば宇宙人が攻めてきて滅亡しかかっている地球なのだ。核ミサイルによって、ではない。しかも、このバルディオスの話は世界が東と西に分かれて戦っていた事があり、核ミサイルは秘匿されていた物だという設定だ。
ここまで緻密に描かれているとやはりそういう見えない権力者の見えない力が働いて「君の所のあの作品は今の気風にそぐわないから止めなさい」みたいな感じに止められたのかもしれない。何せこれが放映されていたのは冷戦時代の真っ只中なのだから。より巨大な鷹だか鷲の爪を恐れて事なかれ主義の政府の一部の人間がそう働きかけたとしても、ある意味納得がいく。円谷のウルトラセブンと言う作品も被爆した宇宙人を扱った話があるが、製作されたにもかかわらず永久欠番にされた。これは原爆による被害を受けた方々の団体から猛反発を受けたという話である。似て非なる話だが原爆や核による事後の作品が(勿論使い方次第だろうが)いかにタブーかということを顕していると思った。まあバルディオスに関しては推測の域を出ない話なんですがね。
しかし、何故か映画というものではこの法則が適用されない。「ターミネーター」という作品があるが、これも冷戦時代真っ只中なのに放映され、続編が出来ている。バルディオスもその例に習って映画化されたのかもしれない。
まあとにかく、バルディオスというこのTV作品はもう製作されることは無い。考えてみればスパロボリバイバルされようとしても、未来からやってきたマリン達という前提があったら結局は永久ループだ。なるほど、メカンダーロボ(バルディオスに負けず劣らずのマイナーロボットアニメ)でも参加できたのにこの作品が参入出来なかった理由はそれか!世界が救えても、マリンがタイムパラドクスでいなくなるのもあんまりだしね。
機会があったら自分オリジナルの作品、第40話「明日を救えバルディオス」を発表したいものだ。