星の瞳のシルエット(集英社 りぼん 柊あおい作 1985年〜1989年)

私のはじめて少女漫画物語です(笑)友人の熊○君から貰った漫画なのですが、第一巻を読み始めてそこからハマリじゃんじゃん集め始め、今じゃこの人の作品はほとんど持っているという自分。当時中学生の終わり位だったので、ちょっとどんぴしゃ感覚だったのかも。まあ話も少女漫画にしては壮絶な物語だったし。
でも、当時少女漫画には少しトラウマがありました。従姉妹がおばあちゃん家によく漫画を置き去りにしていくのですが、その漫画が「パタリロ!」だったんですな。いやもう小学生にアレは毒?つーかもうバンコランとマライヒがやりまくってましたよ(笑)トラウマを植えつけたあの漫画を有害図書指定にして欲しいわ全く。
や、当時同性愛と言うものが理解できなかったし、ましてや「花とゆめ」は超混沌時代だったのです。男同士のエッチシーンは極めてOK(笑)みたいな風潮が横行していたので、白泉社は結構何でもありな「花とゆめ」路線と純愛路線雑誌の「ララ」を刊行しました。分裂したと言ってもいいかもね。前回紹介したわかつき先生の「So What?」もこの「ララ」で連載されたものです。ま「パタリロ」よりは随分まともだと思うし。

いやいや「パタリロ」コラムじゃないんだよ!「星の瞳のシルエット」だってば!取り敢えず再販版はまだ第一巻。ま、とにかく大まかな粗筋行ってみましょう。
しかし・・・これも倉庫漁れば出てくるのにな・・・。いやだってカラーページあるんだもん再版。これはある意味貴重だぜ。


中学三年生になり受験を控える主人公、沢渡香澄は気弱になると鏡に向かって、
「沢渡香澄!強い子よい子元気な子!!よし!」
と気合を入れる、ちょっと変わっているが素直で優しい女の子(笑)。
幼少の頃、偶然知り合った「すすき野原」の男の子に星のかけら(とは言っても水晶の欠片だが)を貰い、それを宝物にしてきた。その男の子は様々な星、特に一番光り輝くシリウスの話をして、香澄の心に大きく思い出を残す。高校進学が間近に迫った現在でもその星のかけらを持っていつか男の子に会えると信じていた。憧れはいつしか恋心に変わっていると気づいたのはここ最近。友人達からの影響もあって、香澄は「すすき野原」の男の子を意識し始めるようになっていく。
そんな時、親友の森下真理子からの提案で、受験を目前に控えていると言うのにクッキングクラブを作ることになった。本当の目的は調理室から弓道部の練習を見るため。真理子の憧れの少年、久住智史を毎日見たいが為だった。しかし、引っ込み思案の真理子には告白する勇気が出なかった。それを応援するために香澄はもう一人の親友の泉沙樹と協力する事に。
ひょんな事から同じ弓道部員の白石司と共にクッキングクラブに忍び込み、ツマミ食いに付き合わされる智史。その目論見も香澄達にばれるが、沙樹と司が隣同士の幼馴染である事も手伝って、急速に仲良くなる五人。少しずつではあるが、智史の優しさに惹かれていく香澄。しかし真理子や、星の欠片のあの男の子の事もあり、惹かれていく自分に歯止めを掛けるのだった。
ラジオを聴きながらの夜の勉強中に、ふと「シリウスの星の欠片の女の子へ」という投稿メッセージが。間違いなく自分宛のメッセージだという確信をした香澄はラジオ局にまで行って投稿はがきを確認したが、彼の居場所は分からず終いだった。そしてラジオのDJに返答のメッセージを頼む香澄。「星のかけらをずっと持っています」と。しかし終業式遅刻寸前で急いでいたせいか、通りがかりの人とぶつかって星のかけらを落としてしまう。無くしたかけらを探すが見つからず、ラジオ局に電話しても放送は(録音だった為)止める事が出来なかった。嘘をつき自己嫌悪する香澄だったが、ふと出会った智史に励まされ、その心に歯止めが掛けられなくなっていく。親友が好きな人を好きになる。誰にも話してはいけない恋心は、いつしか智史が「すすき野原」の男の子だったらと思うようになっていく・・・。


や、ぶっちゃければ智史がその男の子なんですが。そして真理子との壮絶なバトルが!展開されませんよ?(笑)因みに、幼少の頃から智史も香澄を意識していたので、香澄のこの場合は横恋慕とは言いません(笑)しかし、香澄は真理子の事で心にプロテクトを掛けちゃいます。まさに究極の自己犠牲とも言うべき心理プロテクト。お互い惹かれているにも関わらず、告白できないというジレンマでこのコミックスは構成されています(笑)
いやいやそこでもう自己犠牲しないで付き合っちゃうだろ普通!とか、真理子スゲー邪魔!とか色々考えちゃったよ。当時真理子への不幸の手紙が途切れなかったとか(笑)まあ最後はハッピーエンドですがね。最終巻まで手も繋げなかったんじゃねーか?こいつらって感じなストイックさでした。
いやむしろ、少女漫画というジャンルは斯く或るべきでして、今じゃ何?物によっては一ページ目でキスして?一話の最後にSEXだぁ?ちょ・・待ておまいら!それでいいのか現代少女恋愛観。と言うか俺が古すぎるのか!?(笑)


柊あおい先生は、一時期結構有名になったことがあります。短編連載で全一巻の「耳をすませば」が宮崎アニメで映画になったのですね。当時宮崎さんは「今は少女漫画だ!」とか言って柊先生の漫画をイマイチな感じでアニメ化してくれやがりました(笑)何つーかもう、一番好きな作品を台無しにしてくれた感じ?どちらかと言えば、長編の星の瞳のシルエット(あーもう長い(笑)より短編で全てを語るこの作品がとてもお気に入りでした。しかし、劇場にわざわざ見に行った自分が見たのは、恋心とか言うんじゃなくてこう・・・何て言うのか、もう宮崎アニメだったんですよ。つくづく彼は男(漢かな)なのだなぁと思った次第。そう、書いてて気づいた。淡い恋心というこっ恥ずかしさの表現がかなり足りないと言えば分かるかな。良くも悪くも元ネタをモチーフにして作ると言うことがどんなに難しいかという凡例ですな。

当時、少年漫画や男物のロボットアニメに傾倒していた私の価値観をこの「星の瞳のシルエット」という作品は見事にぶち壊してくれました。少女漫画なんて女々しい奴が読むもの、なんて勝手な理屈を持っていた自分でしたが、面白いものはどんなものでも面白いはずです。価値観とか偏見とかはこの際だからどっか遠くにうっちゃって、これを見つけたら読んでみてくださいな?きっとあなたの中で何かが変わるはず。
全国250万乙女のバイブル、と称されていた「星の瞳のシルエット」は、再販版では乙女達の永遠のバイブルと称されました。や、自分は乙女じゃありませんがね(笑)


余談。
書きたいことが他にもたくさんあるのだが、まあ今晩はこれくらいにしといたるわ!
因みに、冒頭に何でジョジョネタかと言うと、写真の「中学・高校の同級生と会いたくなるッ!」で触発されました(笑)表紙に小さい「ッ」って何このセンスは?(笑)
そう言えば「装甲騎兵ボトムズ」と言う超硬派ロボットアニメがありますが、その原作・監督の高橋良輔大先生は「姫ちゃんのリボン」とか「こどものおもちゃ」という前述の少女漫画雑誌りぼんからのアニメ作品の脚本をやったことがある方。小説も書いてて中々の恥ずかしさっぷり。さすが良輔!宮崎にできない事を平然とやってのけるッ そこにシビれる!あこがれるゥ!
オチまでジョジョネタかよッ