第19話 亜空間にかける橋

一夜にしてスイスラー国の住民の大半が消失した。アルデバロンの巨大空母が捕獲光線にて人々を連れ去ったのだ。その中には亜空間の権威者、クラン博士もいた。彼はクインシュタインの恩師でもある。時を同じくしてクインシュタインが太陽系にて第十惑星を発見した。突然惑星が発生する訳が無い。クラン博士と第十惑星、その関係は不明だが、アルデバロンが地球侵略の為に何かを企んでいるとしたら可能性は否定できない。かくして月影は海王星にて第十惑星の観察、そして捕獲されているならスイスラー国の住民の救出任務を命じる。
四人はバルディオスへとチャージアップし、亜空間航法にて数分で海王星へと到達した。バルディオスのセンサーで調査した結果、第十惑星の質量は地球の二倍近くあると言う。自然物ではない、人口惑星である事が判明するが、その目的は依然として判明しない。ジェミーと雷太をバルディオスに待機させ、マリンとオリバーは第十惑星の観察と周辺の調査を開始する。
鉄の塊とも言える第十惑星を観察していたその時、海王星の大地に巨大な基地がある事を二人は知った。アルデコマンドと捕虜の地球人がいる事から、これが敵の本拠地であり、第十惑星建造の為の人足をスイスラー国から調達した事を状況で確認するマリン。更に内部に侵入した二人はクラン博士を筆頭にスイスラー国の住民が不眠不休、そして危険な労働を行われている事を知る。その状態は最早限界に達しようとしていた。アフロディアが陣頭指揮を執り、彼らは鞭で打たれ、力尽き倒れる者は脱落者として処分される。クランは彼女を鬼と呼ぶが、地球を救えなければ鬼と呼ばれるのはお前達だ、と反論する。
再三に渡って要求するクランに、アフロディアは十時間の休養を許可する。しかし残す時間は五時間しかない。そのやり取りを聞いていたマリン達は要領を得なかった。何がタイムリミットなのか、一体何をさせられているのか。それは牢屋に捕らえられているクラン博士の話を聞く事で判明した。人口惑星を作ったのはアルデバロン。しかしその構造には欠陥があった。その欠陥を補うために亜空間に詳しいクランと、労働力としてスイスラーの住民達が徴用されたのだ。労働の場でもある人口惑星中心部では無差別に無重力場が発生し、欠陥を修理するのに多くの人々が犠牲となった。そして、その人口惑星を建造する目的として地球へと直撃するコースを進んでいる彗星の存在がある。彗星はどんな電波、光波でもすり抜ける特徴を持っていて、探索衛星、並びにクインシュタインの手腕を以ってしても激突直前まで察知する事が出来ない。侵略するべき地球が滅んでは意味が無い。アルデバロンは早急に彗星を察知し、人口惑星でブラックホールを形成、亜空間へと彗星を落とし込む方法を取ったのだ。スイスラーの人々やクランは今までの犠牲と、地球の存亡が掛かっている事からマリン達の救出を拒んだ。合流地点を教える彼らにアルデバロン兵を呼んで追い返す始末だ。マリン達は引き下がるしかなかった。
クランはアフロディアに面会を求め、マリン達との合流地点を教えてしまう。作業をBFSに邪魔されたくない一心での行動だ。地球を守る男達がBFSの他にここにいる。アフロディアはそう評価し、彼らの覚悟から休養を中断、作業続行をクランに求める。
追っ手を振り切り、バルディオスへと帰還したマリンは人口惑星完成の為にクラン達に手を貸すことを提案する。その作戦は極めて危険である。しかしBFSのメンバーは地球を守る為なら死を恐れない。早速バルディオスで出撃しようとした処、アルデバロンの襲撃を受ける。合流地点を漏らしたクランの仕業だ。透明円盤群がバルディオスを襲い、更に合体して巨大なエイと化した。凄まじい戦闘力を持ったエイに苦戦するバルディオスは一気に亜空間ビームで勝負を決める。爆散するエイを後にして彼らは人口惑星へと突入した。
人口惑星爆破を遠隔操作する海王星基地でクランはその最終調整を行っていた。マリンの思惑を察知したアフロディアは人口惑星修復と同時にバルディオスもろとも爆破する事をクランに命じ全軍を撤退させる。だが、それを素直に行うクランではない。
イムリミットまで後30分を迎え、マリン達は一分でも早く修復を完了させようとしていた。彗星到達まで後二分と言う状況で修復が完了、視認出来るまでに迫る彗星。マリン達は人々をバルディオスに収容し脱出、即座に爆発圏内から遠ざかる為に亜空間へと突入する。それを確認したクランは安堵し、人口惑星爆破のスイッチを押した。海王星周辺に高圧の重力場が形成される。それは一瞬、亜空間へ掛ける橋となり、彗星を落とし込む穴となった。
海王星周辺の状況を確認する為に現空間へと現出したバルディオスは見事に彗星が消失している事を確認し一同は歓喜した。そんな中、マリンは一人海王星へと降り立ち、原型すら留めていない基地を目前にして絶句する。基地内ではボイスレコーダーを持ったクランが事切れていた。レコーダーにはBFSへの謝罪と感謝の意が込められていた。もっと早く人口惑星を海王星から離れさせれば基地はこれ程の重力波の影響を受けずに済んだはずだ。しかしそれをしなかったのは、マリン達の脱出を確認するまでぎりぎりまで待った結果であった。わが身を省みず、頑なな初老の男の顔を思い出しマリンは心打たれる。理解した時には既に相手はこの世にいない。海王星の地表でクランの亡骸を抱え、静かに涙を流すマリンであった。

エクシ感想……無くてもいいエピソード、でも見たらちょっとホロリとしてしまう回、だったと思います。まあもっと正直な話をすると……詰め込みすぎ?な感があります。地球の二倍の質量なのに人口惑星のサイズがちょっと小さすぎね?と思う人もいるかも知れないけど、あの中にはブラックホールがあるのでそれ位の質量になっても然程気にはなりません。トップをねらえ!の縮退炉みたいなもんだと思います(笑)科学的な事はよく分かりませんけど、バスターマシンがその炉心で活動してる時に圧力で潰されかかった事を考えると、生身で修理するには危険どころの騒ぎじゃありませんね。最後、クランの亡骸を抱えてマリンがむせび泣くのは感動のシーンなはずですが、あれ……そこ真空じゃなかったっけ?みたいでぶち壊し。これもバルディオス時空の為せる業として納得してください(笑)