第20話 甦った悪魔(前編)

旧世紀、東西に分かれた野望の証として核ミサイル基地が世界各地に残されていた。その殆どは世界連盟発足時に解体されたはずだが、機密性故に未だ多くの施設が残っていた。東側最大の核基地、ユーラシア大陸中部ベリシア原野に秘匿された基地もその一つである。アルデバロンはその基地を掌握し、核の抑止力で地球を攻略しようと戦闘部隊を派遣、世界連盟も呼応する様に軍を出動させ、どこにあるとも分らない基地の為に壮絶な戦闘、ベリシア攻防戦が開始された。空戦はバルディオスが出撃した為に連盟側が有利だったが、地上戦における流血は原野を大量の血で染める程凄惨さを増し、両軍の損耗率は痛み分けで終了する程に熾烈を極めた。
その中で、疲弊したアルデコマンド小隊率いるクール戦闘隊長と、連盟軍のハイウード小部隊が出会う。互いに銃を構えあうその時、敵味方無差別に爆撃が襲った。兵士達は自分達が使い捨ての消耗品である事を認識する。砲弾が大地をえぐる様に降り注いだ時、その影響で埋められていた何かの施設を発見する。実はその施設こそ、両軍が確保したがっていた核ミサイル基地だったのだ。基地はICBMを大量に保有し、その数は地球を三度も滅亡させるのに十分である。クールとハイウードは見捨てられた者同士手を取り合い、復讐と野望の為に行動を開始する。
攻防戦の半年後、アフリカ大陸セレンゲティー動物公園に突如50メガトンの水爆が降り注ぎ一瞬にして平和な楽園が消滅した。第三帝国を宣言するクールとハイウードの仕業だ。彼らは両軍の首脳に対して五日以内にユーラシア大陸の全土を帝国領土として認める様に要求した。拒めば核を発射、領土に侵入すれば核を爆破すると言う。世界連盟は到底その要求は聞けず、彼ら混成部隊の暗殺を画策した。その隊長としてS-1星人の技術に詳しく戦闘に長けたマリンが抜擢される。元アルデコマンドのクールは簡易亜空間レーダーを持っていて、更に核基地にはエネルギー探知装置が設置されているせいでバルディオスはおろか、飛行機や車での接近も探知されてしまう。作戦は徒歩、そして原始的な武器で行う事になった。アルデバロン側も暗殺部隊を組織し、第三帝国を打倒する為に動き出す。クールはアフロディアの元部下と言う事もあり、戦闘隊長は司令官である彼女が責任を取る形で任命される。
部下となる者達をアンドロイドに紹介された時、少なからず驚きを隠せないマリン。弓矢のビンズ、マシンガンのダンとキール、サーベルのマンソン、斧のジョンにナイフのクロス。今現在旧式の武器に精通した者はこの死刑囚である彼らだけだと言うのだ。彼らは死刑免除を条件に世界各地の刑務所から一時的に釈放された身だった。殺す事だけが楽しみと言う死刑囚達。ナイフをちらつかせ脅し、動揺を誘う彼らに真っ向から受けて立つマリン。
かくして作戦は開始された。七人はベリシア原野に降り立ち100kmの行軍を開始する。行軍早々に異様な死体がそこかしこにあった。飢えた猛獣に食われた跡がある。狩りまでも楽しもうと言うビンズだが、そこへ忍者が使う手裏剣の様なものが飛来し絶命する。応戦するマリン達。選りすぐりの武器の使い手と言うだけあってたちまち返り討ちにする。戦闘が終わったと思うと、突如打ち倒した敵の亡骸が消えていった。亜空間処分法で襲った事実すら無い物にしてしまうアルデバロンの技術だ。忍者の様な彼らはアルデバロン特殊コマンドだった。それをマリンから聞いて任務を放棄すると言う暗殺者達。彼らは自分達の楽しみの為に殺しをするが、戦争の為に殺す気は毛頭無かった。止めようとするマリンと暗殺者達のにらみ合いの最中、突如キールが狼の一団に襲われた。新しい獲物を求めて集まってきたのだ。瞬く間に食い尽くされるキールを見て一同は戦慄する。ベルシア原野を包囲する様に存在する飢えた狼や特殊コマンド。逃げても地獄、先を進むのも地獄。ならば行動を共にして生存率を高めた方が良い。殺し屋達の腹は決まりマリンと同行する。地球を守る為に、と言うより生き抜く為に。
再び特殊コマンドが襲来する。ダンがマリン達の退路を確保する為に銃撃する最中、コマンド兵の矢に貫かれた。「慣れねえ事をするもんじゃねえ」彼にとって金以外の為に殺しをしたのはこれが初めてである。それを見てまず自分達の行動を阻害する特殊コマンドを一網打尽にする事を決める殺し屋達。夜の闇に紛れてアルデバロン兵の野営地を襲撃する。銃撃や手榴弾の爆発、手裏剣や刀剣での戦い。敵味方入り乱れての乱戦は壮絶を極めた。
静けさを取り戻した野営地に生存者と呼ばれる者はほぼいなかった。気を失っていたマリンが仲間達を探索すると、ジョンは敵を絞め殺した所で立ったまま絶命し、マンソンは傷だらけになって力尽きていた。ナイフのクロスが辛うじて生きていた。しかしその命も狙撃銃の一撃で散らす事になる。生き残りのコマンド兵だ。猛然と突進するマリン。狙撃ライフルの一撃をかわせたのは最後の力を振り絞ったマンソンのおかげだった。コマンドの肩に投げナイフが突き刺さり、その隙にマリンがマスクの付いたヘルメットを銃撃する。顕になったコマンド兵の正体はアフロディアだった。彼女の顔を眼にして突如戦う意欲を失っていくマリン。最早戦う事の出来ないアフロディアが自分を殺せと覚悟を決める。しかし構えた銃を収め爆発する様に吐露するマリンがそこにいた。
「もうたくさんだ! 俺とおまえは敵味方でも今は水爆を防ぐ目的で来ている……それがこのザマだ! この戦いは何だ? この死体の山は何で出来た!?」
ナイフの激痛。私を殺せと呻く様に呟いたアフロディアは痛みで意識を失っていく。ベルシアの原野でアフロディアを抱え茫然とするマリン。しかしどれだけ死体の山を積み重ねようとも、地球が核の危険に晒されている現状に変わりは無い。第三帝国が核を発射するまで後四日と迫った朝であった。

エクシ感想……よくもまあこんなネタを番組にしちゃうなあと驚くエクシです。もろに核ミサイル描写。直撃を受けた動物達がぐんにゃり消えていく描き方は筆舌尽くし難い。よくストップ掛からなかったなあと思う次第。実は今回の話があるからこそバルディオスが完走出来なかったのではと思ったり。東側とかもろに言ってるしなあ。ベリシアだってシとベを反対にしただけだもんね。アニメにおいて核が爆発したと言う描写は実はそれほど無かったりします。核で汚染された大地(ヤマト)とか、核を発射しても未然に防がれた(ガンダム)とか、爆発しても光だけで処理したり(多分SEED?)とか。映画版のバルディオスにしても核ミサイルが爆発していく様を遠くから描写しているに留めていますし。やっぱりこの回は危険視される要因が少しどころか、かなりあったんじゃないかなーと思ったりします。因みにエクシはこの殺し屋六人衆がなんだか結構お気に入り。ダンとかすげーカッコいいわ。
そういえば謎が一つ。攻防戦が終わって半年間も第三帝国の人達は何やってたんでしょう? 多分半月後の言い間違えだと思いますが、脚本見てもアニメ見ても半年って言ってるんだよね。半年経ったら番組終わっちゃうかもですよ!?(笑)