ヤマトタケル

1994年日本アニメーション製作のSFロボットアニメ。この時代と言えば、バブル崩壊して数年のちょっとアニメ興行的にはとても厳しい時代だったと思います。更に日本アニメーションと言えばどちらかと言えばロボットアニメは畑違い。世界名作劇場とか、キャラクターアニメが主流なこの会社が何故かSFロボットアニメを作る事になったのは、映画や漫画等のメディアミックスの影響からだと思われます。因みに日本アニメーション製作のロボットアニメは「ブロッカー軍団Ⅳマシーンブラスター」と「超合体魔術ロボ ギンガイザー」それに「ヤマトタケル」の三作品しかなかったりする(笑)
当時東宝は「ゴジラ」シリーズを一旦終了させ、日本独特の神話世代をモチーフにした「ヤマトタケル」の特撮映画を製作しました。ゴジラ映画の主流をヤマトタケルで人気の代替をしようとしたのです。しかし三部作製作予定としては人気は奮わず、ただのファンタジー映画として名を連ねただけの作品になってしまった。ゴジラの代替で作ったのに東宝的には多分失敗だったのだと思います。
アニメーション版「ヤマトタケル」も、製作的には四クールまで予定していましたが、映画の煽りを食らったのか三クールで打ち切り。と言うより、映画の発表が終わってメディアミックスとしては失敗した企画であるにも関わらず、アニメ版は一年間放映を続けなければならない状態になったと言った方が良いかも知れません。何だか置いてきぼり?と言うか放置?って感じで。
打ち切りの憂き目にあい、三クールに短縮されていたにも関わらず、作品としての質はかなり高い物だとエクシは思います。またTV放映で未消化だった部分もOVAできっちり完結している。製作サイドがこの作品に凄く思い入れがある事が分かります。
作品のイントロとしてさらっと説明すると、未開拓惑星イズモで勇敢だけどガキ大将のタケルが神秘的な存在に選ばれ、遺跡の中から巨人が出現&搭乗、敵が襲来し何とか撃退する物の巨人が暴走、村を追い出される憂き目に合うタケルは逆に冒険の旅立ちを決心する事になる……と、まあそんじょそこらにありそうで無さそうな物語展開。
魔空戦神スサノオがこの作品の魅力の一つで、その重々しい体躯と動きの描写がロボットアニメ好きな自分をワクワクさせる存在でもありました。戦闘シーンに関して言えば極力バンク等を使わない(スサノオが胸の火炎砲を使う時とか剣を抜く時位)良質な殴り合いアニメーションだと思います。
歩き方や動きが「巨神ゴーグ」で、ロボットの出自が「機甲界ガリアン」等のオマージュを使用している感じがします。実はスサノオのデザイン初期稿がガリアンの頭クリソツだったと言う事もあったりして。さすがに遺跡ロボと言う共通点あり過ぎでボツになったようですが。巷ではその頭部の形状(学帽に見える)とシリアスな顔の造形から「承太郎ロボ」とか呼ばれています(笑)
裁くのは俺のスサノオだ! 
あ、スタープラチナソックリと言う噂もあるね、顔が(笑)
そう言えばこの世界に出てくる魔空戦神と言うロボットは実質的にはロボットとは言えず、機械と生体の融合で生まれた戦闘巨人と言う意味合いが強い。エネルギー不足時には口から岩や溶岩を摂取する事で回復。傷つけば血が流れ出るがエネルギーがあれば数日で治る自然治癒能力。前パイロットの残留思念がある為暴走し易い等、今までのロボットアニメには無い傾向の設定が多く付加されている。どっかで聞いた事がある設定だと思ったら、エヴァンゲリオンもそうですか。つかこっちが年代的に先なのでガイナがまたパクリやがったって感じがします(怒)また、戦闘の経験次第で脱皮、第三段階(最終形態)までレベルアップ可能と言う設定も面白い。残念ながらTVでは第二段階までしか成長しませんでしたが、OVAでは最終形態まで魅せてくれました。
キャラクター面に関しては……ディフォルメ? 全編通してギャグ体型、指を描かない(丸手)傾向等、ロボットアニメでこのキャラの適用は稀有と言うか見た事無い感じ。物語展開にしてもどちらかと言えばシリアス重視なので妙なアンバランスが感じ取れます。
さてOPですが……まずこれを見てちょ。前期オープニングです。

更に後期オープニング。

第一期のOPはメジャーデビューしたばかりのアーティスト、GLAYだったんですよね。この曲「真夏の扉」は実は結構黒歴史扱い。つまりそれは「GLAYのデビューシングルはアニメ曲のタイアップだった」と言う事。因みに「真夏の扉」はデビューから二曲目のシングルです。一曲目のシングルは「RAIN」です。じゃデビュー曲はアニメのタイアップじゃないじゃんと思うでしょうが、実はヤマトタケル前期のエンディングがそれだったりする(笑)

どうも調べてみると「RAIN」は映画のエンディングにも使用されているようです。バージョンが違うかとかはどうかとかは分かりませんけど。
で、ですね、何故黒歴史化しているかと言うと、放映が終了後のビデオシリーズ、並びにLDソフトや今回購入したDVD-BOXには「GLAY」の名が全く出てこないのですよ。一応ライナーノーツにはGLAYがやってたと書かれていますが、収録されている1話〜18話までの前期のOP&EDは全て後期の曲に差し替えられている。GLAYの曲など全く収録されていない現状なのですよ。
実質収録されている曲は後期の濱崎直子による「Flower of Desert」と「Twilight songs」だったりする。エンディングは、まあいいですよ? でも前期オープニングのアニメーションと後期OPアニメーションは色々タイミングが違ったりするのです。
タイミングの違いは説明するよりも上のOPを同時再生、GLAYの曲を消音にして前期OPアニメーションを見れば分かると思います。本当全然っ合わないから。
なら後期で収録分を統一すればいいじゃね? と思っても、後期OPには脱皮した第二形態のスサノオや敵である魔空戦神タマノオが味方になっていたり第一期では登場しない宿敵ガイオウとか色々ネタバレなのでそう言う訳にもいかんのです。
ぶっちゃけGLAYの曲はいい曲ですよ。ノリも良いし、勢いもある。エンディングはまた泣けてくるほど綺麗なバラード系。しかし一ヤマトタケルファンとして、主題歌差し替えと言う事態は正直我慢ならん。何故こう言うことになったかは「大人の事情」で判明せず。察するに、彼らGLAYのマネージャーサイド(もしくは本人達が)が、デビューをヤマトタケルで飾って欲しくない、後世にGLAYの曲でアニメーションがあったと言う事実(記録)を残して欲しくないと言う事情があるのでしょう。虫唾が走るね。
考えてみれば、現代ではアニメがかなり優遇されていると思います。そのジャンルには萌えとか何とか色々ありますが、一応日本が世界に代表する文化の一つとして市民権を得ている様な感覚があるからです。でも90年代のあの時代、アニメは冷遇されていたのです。それがこのオープニング差し替えに代表される事だと思わざるを得ないですね。
まあ色々ありますが、兎に角ヤマトタケルと言うアニメーション作品は良い物です。マイナーさは確かに払拭出来ずにいますが、それでもこんな作品があった、打ち切りにめげずに作品をOVAなどで完結させて良い物に仕上げた、と言う事実があります。多分レンタル等では到底見れる事が無い為、DVD等を購入する他ありませんが、機会があれば見て頂ければ幸いです。と言う感じで今日はここまで。嗚呼、造形物欲しいなあ。
それではまた〜(+_+)ノシ