第38話 死への迷宮(1992/11/10 放映)

テックセットしちゃうぜ?

脚本:千葉克彦 絵コンテ:澤井幸次 演出:津田義三  作監&メカ作監須田正己
作画評価レベル ★★★☆☆

第37話予告
満身創痍のDボゥイに忍び寄る死の影。滅びゆく戦士は、己の命を賭けて新たなる進化を決意する。
次回、宇宙の騎士テッカマンブレード「死への迷宮」仮面の下の涙をぬぐえ。


イントロダクション
Dボゥイ達を追ってきたバーナードはフリーマンからのメッセージを携えていた。それは、新たなスペースナイツ基地の完成を伝えるモノだった。一方Dボゥイは、自らの肉体に原因不明の異変を感じる様になっていた。ラダム獣に襲われたノアル達を助ける為に、テックセットしようとしたDボゥイだが、それをバーナードが止めた。静止を振り切ってテックセットしたDボゥイは、戦いに勝利はしたものの、組織崩壊が進行する肉体は、既に限界を越えていたのである。



 海の中からは水中ラダム獣が、そして空からは飛行ラダム獣が襲いかかる。
「ちっ!!」
「くっそぉ!! こいつらぁっ!!」
 水中ラダム獣は時には氷を突き破ってバルザックに襲い掛かり、空からは飛行ラダム獣の粘液弾がノアルに強襲を掛けた。二人は交互にフェルミオン砲を撃ちながらフォローし合って何とか戦局を保とうとしている。
 スペースナイツの一行はラダム獣の群れを相手に激戦を繰り広げている最中である。ここアイスランドの大地から脱出する為に、グリーンランド号を先に行かせてソルテッカマンの二人は殿を勤めている。ラダム獣を呼び寄せた原因は、数時間前に湖の水上施設で水中ラダム獣の一群を全滅させたのが呼び水だった様だ。実際には数匹水中に逃がしていたのだ。
 いかにソルテッカマンが二体いるとは言っても、やはり津波の様な軍で押してくる獣達に対して、二人だけの防波堤は押し留めるだけで精一杯だった。
「うぉっ! おわぁっ!!」
 飛行ラダム獣の粘液がバルザックの一号機改の足元を撃つ。足場を崩されたバルザックは踏み外して転倒してしまう。更に陸に上がった水中ラダム獣が倒れ伏したバルザックに襲い掛かったが、間一髪二号機のフェルミオン弾のフォローが間に合った。
「大丈夫か!? バルザック!!」
「あぁ! それよりグリーンランド号はどうなってる!?」
「船出の準備には、もう少し掛かりそうだぜ!」
 実際にソルテッカマン二機よりもグリーンランド号の足は遅い。二人が必死の殿を勤めてはいるが、ソルテッカマンの防波堤は何匹かグリーンランド号へ向かうのを阻む事が出来なくなっていた。
「踏ん張れよ野郎共ぉっ!! 船出の後には美味い酒が待ってるぞぉっ!!」
 そしてトレーラの上部には元連合地球防衛軍特殊部隊所属のバーナード軍曹とその配下の兵士達がフル装備で近寄ってくるラダム獣を迎え撃つ。追いすがるラダム獣の一番脆弱な複眼等を撃ってその勢いを上手く殺していた。空からは主のいないペガスが航空支援を行っている。現行で出せる武装を全て放出し、スペースナイツはアイスランドからの脱出を図ろうとしている最中であるが、今現在テッカマンブレードは出撃出来ない状態にあり、目下スペースナイツの面々は苦戦中であった。
 しかもそんな時、氷の路面を走っていたトレーラーの車輪が側溝にはまり、スタックして空転してしまう。
「あぁんもぉこんな時にぃ!! ペガス! 押してちょうだい!!」
「ラーサー!」
 航空支援を一時中断すると、飛行形態から人型形態へと変形したペガスがグリーンランド号の後部に取り付き、その馬力と巨大な腕で車輌を押し始めた。
「もっと強くぅ!!」
 運転室でトレーラーを操作しているレビンが通信越しに叫ぶ。ラダム獣の群れはもう数百メートル後ろに迫っている。
「ほぉれもう一息だ! 早くしねぇと追いつかれちまうぞぉ!!」
「ラーサー!!」
 バーナードがペガスに檄を飛ばした。すると、ペガスもそれに応えながらセンサーアイを光らせ、フルパワーでトレーラーを押す。すると車輪が溝から外れ、再び走り出すことが出来た。
「やったわぁっ!」
 レビンがアクセルを踏みながら歓喜した。そしてまたペガスは空へと飛び上がり、飛行形態に変形して爆撃を開始した。
「ヨッホォィイ!! よくやったぁっ!!」
 そんな至極有能なロボットを軍曹が褒める。海まであと数kmの距離である。
「う……くっぅ……」
 そして、周りでそんな激戦を繰り広げている中、トレーラーの居住ブロックの寝室では倒れ伏したDボゥイが意識を取り戻していた。アキとミリィはそんな彼に付きっ切りで看病を行っている。
「Dボゥイ……」
「お……俺は……」
 自分はどうなったんだ、とアキに呼び掛ける力すら無い。アキは周りの状況を一切彼には言わずに、
「大丈夫……大丈夫よ……」
 とだけ言った。すると、Dボゥイはまた深い眠りについた。
「うっ……」
 ミリィがそんな疲弊し切ったDボゥイを見て涙目になる。今まであんなに力強く戦ってきた頼もしい仲間が、今死の淵にいる。そんな惨たらしい状況が耐えられない。それはアキも同様だったが、彼女はあくまでも気丈に振舞おうと思っている。
 殿を務めている二人にそろそろ限界が訪れようとしていた。グリーンランド号から離れて撤退を行うこの作戦では、戦闘中に補給を行うことも出来ない。
「くっそぉ! 幾ら倒してもキリがねぇ!」
「ノアル! 先に行け!」
「分かった! ここは任せたぜっ!!」
 そう言って、バルザックはノアルを先行させた。そして、バルザックの一号機改は膝を付き、ラダム獣が近付いてくるのを待つ。
「そぉーだそぉだ……もっと寄って来ぉい……!」
 バックパックに装備された拡散フェルミオン弾発射装置を全開にして、自分を囮にラダム獣の群れをおびき寄せる。その時、グリーンランド号はようやく海へ入ろうとする最中であった。
「喰らえぇぇっ!!」
 雄叫びと共に残ったフェルミオン粒子を全て放出する。すると、バルザックの周りにいたラダム獣は全て一掃された。
「いいぞ! 乗り込めぇっ!!」
 海に入ったグリーンランド号は車体のフローターを展開し車輪を収納すると、海上を滑る様に進み始める。そして後部ハッチが展開されると、軍曹の号令と共に兵士達四人がハッチの中に入っていく。ペガスもそのまま飛行形態の状態を維持して収容された。残りはノアルとバルザックの二人だけだ。
 ノアルの二号機がトレーラーに追いつき、開いたハッチへと着地すると後ろを振り向く。残弾を使い切ったバルザックの一号機改がホバリングによるダッシュで追いかけてきている。二号機にはまだ数発だけフェルミオンの残弾がある。バルザックの真後ろ、至近にまで迫っているラダム獣を撃つ。通信で撃つタイミングをノアルが伝え、バルザックは砲撃支援を巧みに回避する。二人の息はピッタリと合っていた。
 そして二機共トレーラーに収容されると、巨大なハッチが閉じ、グリーンランド号は潜行し始めた。車体下部のフローターを収納し、トレーラーはそのまま潜水艦となり深い海へと潜り始めた。
「なんとか……振り切ったなぁ!」
「あぁ……!」
 ソルテッカマンの鎧を脱いで、二人は安堵する様に一息ついた。テッカマンブレードが不在の状況だと、こうも苦戦すると言う事を二人は改めて知るのだ。
 そんな疲れ果てた彼らの元にミリィがやって来る。ノアルは重篤なDボゥイが気掛かりになって少女に聞く。
「Dボゥイは?」
「今は、眠ってます……でもこのままじゃDボゥイの身体は……」
 ミリィはうなされ苦しんでいるDボゥイの姿を思い出して今にも泣き出しそうだった。
「アラスカの基地に急ぐしかねぇ。フリーマンが何か手立てを考えているはずだ」
「本当ですか!?」
「俺が出るときには、その研究を開始していたからな」 
――――頼むぜ……チーフ……!
 最早Dボゥイの命はスペースナイツのリーダーであるフリーマンに掛かっていた。ノアルは心の中でそう呟くと、Dボゥイの身体が基地まで持つことを切に願う。だが、そんな風に思う彼らに忍び寄る影があった。水中を泳ぐラダム獣が、グリーンランド号の航路を追ってきているのだった。
 その頃、ラダム樹の森に覆われようとしている朽ち掛かった洋館の中で、二人の男女が言葉を交わしている。その場所は冬季に差し掛かっている所だからか、暖炉の中には薪がぼうぼうと燃えている。
「エビルが来るまで待てだと? どう言う事だ! ソード!」
 二人の男女。こうして会話しているのを見れば普通の人間には見えるが、彼らは厳密に言えば人ではない。
 一人は長髪を後ろ手に結んだ赤いロングコートの白人男性。細面の美形と言った風の、その男の名はモロトフ。別の名をテッカマンランスと言う。
「エビルは、自分の手でブレードの息の根を止めたいらしいわ」
 そしてもう一人のアジア系の女性は名をフォン・リー。黒髪長髪の中国美女と言った、妖艶な魅力を醸し出す、この女性のもう一つの名はテッカマンソード。
 そう、この二人は人ではない、侵略者ラダムの尖兵である。二人は全く相反する男女ではあったが、共通項があるとするなら、テックセットする為のクリスタルを持っている事と、赤い目を持つと言う事だけだろう。
「馬鹿な事を……エビルではブレードに勝てはしない。これまでがそうだった様にな……」
「ランス、貴方何を考えているの?」
「ブレードの始末なら私独りで充分だと言う事だ」
「勝手な真似は、止してちょうだい。エビルが気を悪くするわ」
「裏切り者を始末するのだ。責められるワケが無い」
「ランス……」
「さてお前はどうする、ソード? 力尽くで私を止めてみるか?」
 モロトフはソファーに座りながら、まるでフォンを挑発する様に言った。 
「貴方がエビルの指示を無視しようと私には関係が無いわ」
 フォンは誰が強いか等と言った事にまるで無頓着ではあったが、
「でもランス、貴方のした事が結果的にオメガ様への反逆となるのなら、私は容赦しない!」
 テッカマンオメガ、現在のラダム司令官にしてDボゥイ達の長兄である相羽ケンゴの言葉は、フォンにとって唯一無二の優先すべき事柄であった。その為なら、本来禁忌とされるラダム同士での諍いも、彼女は辞さない気でいた。
「いや、むしろ私はオメガ様に知って貰いたいのだ。エビルよりも私の方が有能だという事をな」
 そう言ったモロトフも、無闇に他のテッカマンと戦いたいワケではない。彼は参謀型のテッカマンであり、
本来司令官の傍にいるはずの自分の地位がエビルよりも下、と言うのが常日頃から気に入らないと言った様子だった。つまり、今回ブレードを倒そうと思うのは功名心の表れだとも言える。
「エビルの出番は無い……ブレードは私が倒す! 必ず倒す……」
 そう、赤い目のモロトフは不敵に笑みを浮かべて言うのだった。 
 アイスランドの戦闘から数日後、ひたすら海の中を潜行していたグリーンランド号は、ようやく浮上して北極海へと辿り着き、アラスカの大地を踏んでいる最中であった。数千kmの距離を休み無しの強行軍で渡った彼らにとって、もうトレーラーのエネルギーの出し惜しみをする必要も無い。スペースナイツメンバーの長き旅も、アラスカをゴールにしてようやく終える事になるが、それは取りも直さずDボゥイを救う為に無理を押したラストスパートでもあった。
「どうですか? Dボゥイは」
「衰弱し切ってるわ……まるで、飲まず食わずで砂漠を彷徨った人みたいに」
 グリーンランド号のオペレーティングの合間にミリィはDボゥイの部屋に何度か足を運んでいる。アキは、ミリィと交代ではあったが、この数日ずっとDボゥイの看病をしている。 
「薬は……」
「……何も効かないわ」
 溜息を吐きながら、アキは頭を振ってそう言った。Dボゥイの症状はミユキの組織崩壊の状態とよく似ている。痛みを緩和するはずの鎮静剤ですらその効力を発揮しない。組織崩壊とは、まさに身体がバラバラになる様な危険で重篤な症状でもあった。
「早く……基地に着ければいいんですけど……」
 あと少し、あと少しだけ我慢して欲しい。アキとミリィは、Dボゥイの顔を見ながら、心の中でそう呟いた。
「ねぇ? どっちに行けばいいのよぉ?」
「座標はこの辺りなんだが……」
「だぁって何処見たって、基地なんか見えやしないじゃないのよぉ」
 氷の大地は何処を見ても真っ白な背景しかない。ノアルとレビンは運転室で周りを見ながら怪訝な声を上げている。そんな二人にバーナードが言う。
「慌てんじゃねぇ! ほれ、あそこだ!」
「え……あそこがぁ!?」
 其処は半ば氷雪に埋もれている人工的な建造物だ。100年以上前の頃、全世界では有りとあらゆる場所から宇宙を目指すプロジェクトが立ち上げられた。このアラスカ宇宙基地も、その施設の一つである。周囲には衛星から電力を受け取る為のマイクロウェーブ受信機が設置され、超伝導カタパルトや基地設備は全て地下に埋没、もしくは収納された基地である。見た目は、既に朽ちてしまった建造物にしか見えないが、それがある意味偽装も兼ねている様だ。
グリーンランド号、間も無く、格納庫への収納ルートに入ります」
 そして基地の指令所にいるフリーマン達は、モニターでグリーンランド号の来訪を既にキャッチし、彼らを受け入れる用意を行っている。
「メディカルルーム、受け入れ態勢を!」
「準備OKです」
「格納庫、受け入れ態勢に入れ!」
 基地の正面ゲートは氷雪に埋没していて機能していない。だがグリーンランド号が基地へ近付くと、氷の地面に偽装されたハッチが開き、彼らを招き入れた。トレーラーを収納すると、直ぐにハッチが閉ざされ、其処は至近から見ても機能していない廃墟に見える。
 アラスカの新スペースナイツ基地は、内部は完全に機能している。巨大なトレーラーを収納する為の格納庫は充分なスペースがあり、後部ブロックが外されたスペースシップブルーアース号もその格納庫にあった。
 グリーンランド号が格納庫に止まり、後部のハッチが開かれた其処にはフリーマンと本田が待っていた。
「ウワァオ! 親っさぁ〜ん!!」
「ぬぉう……Dボゥイは! どうだい!」
 久しぶりと言った風に、レビンは本田に抱きついて再会を喜んだが、男に抱きつかれても正直良い気分ではない。本田はDボゥイの身を案じて、レビンにそう急かした。すると奥からDボゥイに肩を貸してやって来たアキとノアルがフリーマン達に声を掛ける。
「チーフ! 親っさん!」
「挨拶は後だ!! Dボゥイを、早く!!」
 ストレッチャーにDボゥイを乗せると、直ぐ様彼はメディカルルームへと運ばれていった。
 アラスカの基地は旧スペースナイツ基地に比べれば、それ程施設が充実しているとは言い難かったが、治療室やラダム樹の為の実験施設と言う意味合いでは、新生スペースナイツ基地としては申し分無かった。これもフリーマンの手腕の成果かも知れない。
 治療室を見下ろした経過観察室ではスペースナイツの面々が集まってDボゥイの様子を見ている。彼は呼吸マスクを付けられ、点滴治療でその命を繋ぎ止めている。
 数時間経つと、朦朧とした状態でDボゥイが意識を取り戻した。見上げるとフリーマンと本田がいるのを確認し、基地に何とか辿り着けたのだと悟った。
「う……チーフ……」
「今は安静にしててDボゥイ。もう何も心配はいらないから」
 アキは観察室のマイクからDボゥイに語りかける。だが、彼にとっては一番の懸念があった。
「チーフ……俺はこれで完全に治るのか……」
「チーフ……?」
 それはDボゥイも勿論、その場にいる全ての者が抱く懸念だった。スペースナイツが今後ラダムと言う巨大な敵と戦うに当たって、一番の関心事であるはずだった。
「君がもう、テッカマンになりさえしなければ……」
「うっ……! どう言う意味だ……!?」
 Dボゥイはその言葉を聞いて激しく動揺する。例え動けなくても。
「これは君の身体の組織崩壊を食い止める治療法だ。安静にさえしていれば、もう命の危険は無いだろう。だが、テックセットを続ければ、組織崩壊は進行する。それは君に、確実に死をもたらす……!」
 例えて言うなら、Dボゥイの今現在の状況はヒビが入った割れたガラスである。割れたガラスがどうやっても元の一枚のガラスには戻らないのと同様に、組織崩壊が進んだ身体の再生を行う事はある意味不可能だと言う事なのだろう。Dボゥイが今後テックセットすると言う事は、そのガラスの完全なる崩壊を意味していた。
「……っ!! 嘘だっ!!」
「嘘ではない。その身体でテッカマンになってどうしようと言うのだ。他のテッカマンはおろか、ラダム獣にすら勝てはしないだろう」
「何か方法は無いのか……テッカマンとして戦う方法は……!」
「無い。君の役目は終わったと言う事だ」
 フリーマンは、まるでDボゥイを用済みと言わんばかりに言い放った。辛辣な言葉ではあったが、はっきりとモノを言うフリーマンらしい言葉である。
「チーフぅっ……!」
勿論Dボゥイは納得できず、動こうともがき、呻いた。観察室にいるフリーマンに手を伸ばそうとしても腕が上がらない。
「……鎮静剤を」
 フリーマンがそう言うと、メディカルスタッフがDボゥイに処置をする。すると彼は直ぐに静かになり、目を閉じて再び深い眠りについた。
「冷たすぎるぜチーフっ! あんな言い方は無いだろう!!」
「そぉよ! あんまりだわぁ!!」
 ノアルが、そしてレビンが観察室を出ようとするフリーマンに憤った。
「他に……どう言えと言うんだね……!!」
 そう言って、フリーマンは部屋を出て行った。フリーマンも好き好んで言った訳ではない。彼でさえ、その言葉を口から捻り出すのに悲痛な面持ちをしていたのである。
 数日後、スペースナイツのメンバーは束の間の休息を得ている最中、格納庫では相変わらず急ピッチの修復作業が行われている。元はブルーアース号の物だったグリーンランド号の後部ブロックが、元の主に備え付けられ、収納式のカタパルトの準備にも余念が無い。そんな風に作業員が忙しなく動いている傍らで、本田がペガスの背部パネルを開いて何かしらの作業を行っている。パーツ類が其処彼処に散乱し、明らかに解体作業に近い事を行っている様だ。それを通り掛かったレビンが驚いて声を掛けた。 
「あぁ! 何してるのよ親っさぁん!」
「テックセットの為の回路を閉鎖するんだ。お前も手伝え!」
「え……どうして、そんな事を?」
「あのDボゥイの性格だ。何かあったら、絶対テッカマンになるに決まっとる。そうさせない為だ!」
 本田はDボゥイの事をよく理解していた。最早、Dボゥイはこの中に入るだけで死ぬ身体になってしまったのだ。そんな死刑台と棺が一緒になった様な、テックセットルームをそのままにしてはいけない、と本田は思い、レビンも納得してその作業を手伝う事にした。
 そして治療室のDボゥイはようやく意識を取り戻していた。
――――チーフの研究は、弱っていた俺の身体をここまで回復させてくれた……だが、俺は本当にテッカマンになれずに……?
 回復はかなり顕著で、既に思う様に身体が動くまでに至っていたが、Dボゥイは堂々巡りの思考に捉われていた。それは唯一つ、自分は今後テッカマンとして戦えるのか否か。
――――いや……何か方法があるはずだ……俺を再びテッカマンにする方法が……!
 もう立ち上がる程まで回復したのなら、やるべき事は一つだった。Dボゥイは呼吸マスクと点滴注射を取り去ると、病衣のまま治療室を出てフリーマンの実験施設へと向かった。
 その頃、指令所ではスペースナイツの面々が集まってDボゥイの話をしている。
「確かに……あいつは、充分過ぎる程やってくれたんだ……そうだろう? 後は俺達で頑張るしかねぇってこった。あいつはもう戦えない。いや、戦っちゃいけねぇんだ……!」
 ノアルがそう言いながらバルザックの肩に手を置いた。もうDボゥイは戦えない、ノアルはその言葉を聞いて、肩に置いた手は無意識に力が込められる。
「ノアル……」
 バルザックがノアルの憤りを聞いた。無理も無い、ノアルとアキはずっとDボゥイの戦いぶりを傍で見てきたのだから。
「あんな状態のあいつに戦って欲しかぁねぇんだよ!」
「……それであいつが、納得するかな?」
 だがバルザックは、敢えて反論した。例え死ぬと分かっていても戦いに臨む。彼の思考はDボゥイと似たり寄ったりだった。
「させるしかねぇだろぉっ! でなきゃ、あいつは……」
 その時基地内に警報音が鳴った。何者かが防犯システムに引っ掛かった様だ。それは誰であろう研究施設を探索していたDボゥイだった。彼はフリーマンのラダム研究の資料を漁り、自分がテッカマンになれるかどうかを必死に探している。其処には様々な資料があった。書きなぐられた研究メモ、ラダム獣の標本、ラダム樹の種子等と言ったありとあらゆる研究資料を目にして、Dボゥイは自分がテッカマンになる為の鍵を探した。
 そして行き着いたのは、厳重に隔壁で閉ざされたブロックだ。彼は隔壁のスイッチを押してその先にある物を目にすると、驚愕の表情を浮かべた。
「はっ! ……これは!?」
「何をしているんだ! Dボゥイ!」 
「チーフ! これは一体何なんだ!?」
 研究ブロックに駆け込んできたフリーマン達にDボゥイは聞く。
「Dボゥイ! これ以上無理をしたら貴方の身体は本当に……きゃあぁっ!!」
 病衣のままのDボゥイを押さえようと、ミリィはDボゥイに近付いたが、その時彼女も研究室の中にある物を目にして悲鳴を上げる。
 その部屋には円柱状の強化ガラスに入れられたラダム樹があった。ただのラダム樹ではない、大きく開花したラダム樹だ。四方に巨大な赤い花弁が開かせ、そしてその中央、通常の花で言えば柱頭、花粉を受け取るめしべの部分には巨大なクリスタルがある。そう、それも人が丁度入る程の大きさの、柱状の水晶だ。
 そしてその中には、異形の人型がいた。 
「こ……これは!? ラダム樹が花を咲かせているっ!?」
「チーフ……!」
 今までラダム樹の研究を手伝っていたアキでさえその異様を目にした事が無く、Dボゥイはこの花についてフリーマンに説明を求めた。
「一つだけ異常成長を遂げた、ラダム樹だ。調査員が偶然発見し採集した。……だが、調査中彼が中に取り込まれてああなってしまった」
「死んでいるのか?」
 今度はバルザックが聞いた。多くのラダム獣を撃破してきた彼ですら、その異様を見て驚愕している。
「いや……だが脳波は検出されていない。意識を持たない抜け殻の様なモノだ」
「しかし! これは間違い無くテッカマンだ! 装甲を持たない素体状態の!」
「……そうだ」
 Dボゥイはその事を良く理解していた。素体状態のじぶんとほぼ同じ姿。形状は部分部分で相違があるが、明らかにその調査員は素体テッカマンにされてしまったのだった。
「はっ! このラダム樹を使って、俺の身体は元に戻らないのか!?」
「何言ってるの!? Dボゥイ!!」
「俺がもう一度、テッカマンとして生まれ変わる事は!?」
 アキが止めようとしても、Dボゥイはこのラダム樹の力でテッカマンになる事を望んだ。ただの一般人が取り込まれてそうなったと言うのなら、同じ事を自分も行えば良いのではないか、そう考えたのだ。
「出来ない。現状のテッカマンのままでは……!」
「どういう意味だ!?」
 その言葉の意味が分からず、Dボゥイが聞くと、フリーマンは少し嘆息して説明を始めた。これを見られてしまったのなら、全てを話すしかない、そんな風に思いながら。
テッカマンには、進化の余地がある事が、研究の結果分かったのだ」
「進化だって……!」
「うむ……テッカマンは外的要因、例えば、戦う環境に応じて進化するシステムを備えている様だ。時期と要因が揃った時、テッカマンは新たな段階を迎える……爆発的進化、そう……ブラスター化だ」
「ブラスター化?」
「ブラスター化……」
 アキやノアルが繰り返して言った。つまり、例えて言うのならテッカマンブレードの今の姿も、進化の一形態に過ぎないのだろう。環境に応じて樹木がその形態を変える様に、テッカマンと言う生体兵器も状況に応じて変化するのだと言う。
 そしてまた別の進化の一形態としてブラスター化があった。現状のテッカマンのポテンシャルを大幅に上回る、新たなテッカマンへの道。直訳すれば発破等を破裂させる者。爆発的進化を行う、テッカマンの新たなる進化の一形態がそれだった。
「自らの肉体をより高度なモノへと進化させた時、テッカマンはブラスターテッカマンとなる」
「ブラスター……テッカマン……」
「君の身体の組織崩壊は、君がテッカマンでありながら、テッカマンと戦うと言う、ラダムにとっても予想外のケースに陥った為だ。進化のステップが余りにも早すぎたのだ」
「と言う事は、ブラスター化に成功すれば、俺はテッカマンとして生き延びる事が出来るのか! チーフ、知ってるんだろ!? 頼む、教えてくれ!!」
 Dボゥイはフリーマンに掴みかからん勢いでそう捲くし立てた。そして、フリーマンも研究者としてその進化を行ったらどうなるのか、と言う探究心の結果、行き着いた結論を述べた。
「方法は確かにある。成功すれば、組織崩壊に苦しむ事も無くなるだろう」
「だったら、何故!?」
「それは……君が不完全なテッカマンだからだ」
「……っ!」
「不完全な形でテッカマンになり続けた君がブラスター化をすれば、肉体的な負担は爆発的に増大する。よって……もしブラスター化に成功したとしても、君の命はもって半年……いや、或いは三ヶ月!」
 衝撃の言葉をその場にいる一同が聞いた。ブラスターテッカマンになれば、寿命が著しく削られ、一年も経たずに死亡する。爆発的進化は組織崩壊を克服し、大幅なポテンシャルアップには確かに繋がるが、それには勿論対価と言う代償が必要だった。
恐らくブラスター化は例えて言うなら、この広い銀河の何処かの宇宙で、ラダムのテッカマン達が戦いを挑んでも勝利する事が出来ない、そんな敵に相対した時の、言わば決戦兵器なのかも知れない。
「三ヶ月か……それだけあれば充分だ」
「おい……ボウヤお前……!?」
「Dボゥイ!?」
 Dボゥイは開花したラダム樹を見上げながら、静かにそう言った。そんな決死を見て、バーナードやアキは彼の言動に驚愕する。
「だが、あくまで実験データで導き出した方法に過ぎない。進化促進、ブラスター化に失敗した時には、君はその瞬間に死ぬ事になる……成功確率は50%だ」
 フリーマンはそう、確かにDボゥイに言った。半分の確率でDボゥイには死が待っている。これは彼が不完全なテッカマンだと言う事に要因があった。脆くて危うい、更にヒビの入ったガラスを熱で一旦溶かし、様々な材料を投入して強化ガラスを作る、そんな行程とほぼ同等の行為だと言えた。
 ラダムの技術で言えば、それはテックセットシステムが行うフォーマットを、もう一度行う再フォーマットと呼ぶべき行為だ。アルゴス号ではフォーマット中に何人もの乗組員が犠牲になった。50%の確率と言うのは、まだ可能性が高い方かも知れない。
「チーフ……まさかその50%の賭けとやらを……!?」
「私にも分からないのだ……」
「……何が分からないって言うんだよぉ……!!」
 ノアルはフリーマンを相手に憤った。親友にそんな危険な賭けを行うと言うのなら、例え尊敬する上官だったとしても彼は殴り掛かるつもりでいた。そんな彼を抑えたのは、レビンだった。
「やめて! チーフだってDボゥイの事を考えているのよっ!?」
「じゃあ何ではっきりと否定しないんだっ!! Dボゥイに50%の決断を、どこかで考えているからじゃないのかっ!?」
「そんな事無いって!! チーフは、ペガスの回路を切るように指示したもん!」
「えっ?」
 本田からそう話を聞いて、レビンはノアルにそう言った。フリーマンに掴み掛かろうとしていたノアルはその言葉を聞いて突如固まった。
「私は……常に最善の方法を取ってきたつもりだ。全ての決断に対して私なりの責任を取ってきた」
 フリーマンは、そう言って、重い表情をする。レビンの言う通り、彼は誰よりもDボゥイの事を心配していたのだ。だからこそペガスの回路閉鎖を本田に頼んでもいたし、このラダム樹の花の事ですらスペースナイツのメンバーに対して隠し通すつもりだった。
「だが、この件に限ってだけは……最善の方法など一つも有りはしなかった……すまない、Dボゥイ」
 そう言って、フリーマンは研究室を出て行く。彼の謝意を聞いて、Dボゥイはいても立ってもいられなくなってフリーマンを追い掛けようとした。だが、それをアキが止める。
「Dボゥイ……!」
「アキ! 放してくれ! 俺は……俺は!!」
「待って! Dボゥイ!!」
「アキ……」
 アキはDボゥイの前に立ち、彼の肩に手を置いて正面から目を見た。そして言った。
「お願いDボゥイ……生きると言う事をもっと考えて……!」
「アキ……」
 自分が生きると言う事。死と言う結果を省みずに賭けを行う事。今のDボゥイには、自分の存命と言う事に関してかなり無頓着だった。だからこそ、アキはもっと考えて欲しいと懇願するのだ。ラダムへの怒りと憎しみで盲進している彼に、自分の命と言う事を再認識させる為に。
 そしてDボゥイは基地の外に出て、一人夜空を見上げた。
――――50%の確率で、待つのはただ死ぬ事か……
もうすっかり身体の調子は回復している。Dボゥイはいつもの赤いジャケットを着て、岩場に腰掛けると、空に浮かぶオーロラを見ながら、自分の命の意義について思いを巡らした。
――――自分が生きると言う事を、もっと考えて!
 アキの言い分も確かに分かる。自分はラダムに対する怒りと憎しみで周りが見えなくなっていたのかも知れない。冷静に考えれば、ブラスター化への進化は自殺的、自虐的な行為だ。そんな風に考えられる様になった。
――――テッカマンとして生きる事が許されないなら、俺は普通の人間として生きるだけか?
 普通の人間として生きる。これからはテッカマンにはならずに、外宇宙開発機構の一員として、普通の人間として生きていけばいいのか。愛する者もいる、信頼出来る仲間達もいる。
 だが。だがDボゥイは想った。今まで出会ってきた人々を。家族を。 
――――違う……! 俺は戦ってきたんだ! 
『タカヤ! お前の使命とは、奴らに肉体を乗っ取られたシンヤやミユキをお前の手で倒す事だ!!』
『そんな……!!』
『お前が倒すのは兄でも弟でも無い! 侵略者ラダムなのだ!!』
『テックセッター!! ブレードォ! 死ねぇっ!!』
自分をラダムの手から救ってくれた父、相羽孝三を。かつての同僚だったフリッツ、テッカマンダガーを。自分の弟であるシンヤ、テッカマンエビルを。尊敬すべき師匠ゴダードテッカマンアックスを。そして愛すべき妹ミユキ、テッカマンレイピアを。
 彼らと何度も槍を交え、その死に様を心に刻み込んだ想いが蘇り、Dボゥイは衝動に駆られた。
――――俺はもう後戻りできないんだ! 俺は自分自身で、ラダムと戦う事を選んだんだ!!
 Dボゥイは決意した。いや、ある意味答えは既に出ていたのかも知れない。彼らを想うのなら、自分はここで終わってはいけない、そう考えるしか、Dボゥイに残された道は無かったのだ。
 そしてフリーマンも夜空を見上げていた。鋭角的なサングラスを掛け、その双眸を誰にも悟られまいとしているのか。そんな彼の私室に、ノアルがアキと共に神妙な顔をして入って来た。
「あの……チーフ。さっきは……済みません」
「いや、良いんだ……それより、これ以上Dボゥイを戦わせるわけにはいかん」
君達もそのつもりでいてくれ、と言おうとしたその時、Dボゥイもフリーマンの部屋に入ってきて、突然言い放った。
「50%の確率でも構わない! チーフ、俺は戦わねばならない!!」
「どうして!? Dボゥイ! 何故貴方が自分の命を投げ打って戦わなくちゃならないの!? 誰も貴方にそこまでして―――――」
 アキはまた彼を止める為に、Dボゥイの目を見て、彼の両腕に掴み掛かる。
「やらなければならない事を、やる為だ……」
「Dボゥイ……」
 アキは、静かにそう言った彼の目を見ると、もう止められないと悟った。Dボゥイはアキが言った様に、もう充分に自分の命について考えたのだ。考えた末の結論はやるべき事をやる、ただそれだけだった。
「50%の確率で……君は死ぬ事になるんだぞ?」
「チーフ! これが最善の方法だ! 他にラダムを滅ぼす方法は無い!!」
「Dボゥイ……どうして!?」
 どうしてこの人が、どうして愛する人が逝かなくてはならないのか。そんな理不尽を、アキは想う。
「……どうして……Dボゥイ……」
 アキは止められないと分かっていた。それでも彼を止めたかった。アキは力なくDボゥイの前でしゃがみ込み、愛する者がいつか死ぬと言う運命を止められない、自分の歯痒さに泣き崩れた。
そんな彼女の手を、Dボゥイはしっかりと放さずに、握っていたのだった。
 丁度Dボゥイがそんな決意を顕わにした時、新スペースナイツ基地に新たな脅威が徐々に忍び寄っていた。グリーンランド号の進路を真っ直ぐ辿ってきた水中ラダム獣の一群。まだはっきりとスペースナイツの所在は掴めていないが、彼らの新たな本拠地が見つかるのは、時間の問題だった。
そしてDボゥイのブラスター化への調整は直ぐに行われる事になった。Dボゥイの体調もすこぶる良好であるし、またいつテッカマンが襲撃してくるか分からない。
基地の奥深くにある研究施設では天井から宙吊りにされたペガスがあった。肩や身体には様々なコード類が設置され、Dボゥイの再フォーマットは準備万端行われた。
そしてガラス越しの隣のブロックには、開花したラダム樹があった。
「クリスタルに人工的なエネルギーを与え、増幅させ進化促進を行う。所要時間は3時間……3時間後に全ての結果が出るだろう。その時、君はブラスターテッカマンになっているはずだ」
 ペガスを見上げるフリーマンがそう言った。Dボゥイもペガスを見上げている時、バーナードが声を掛けた。
「ボウヤ、これはおめぇだけの戦場だ。手助けしてやれねぇがこれだけは忘れるんじゃねぇぞ? 生きて帰ってくる事をな」
「あぁ……忘れないさ!!」
 生きて、仲間達の命を守る。そう彼に教えてもらった。
「Dボゥイ! 何も貴方が無理をしなくたって!!」
 レビンはまだ納得していない様子だった。それはノアルも同様だ。だが、Dボゥイは振り返らずに言った。
「必ず生きて戻ってくるさ!」
「ぁ……」
仲間の命を守る、それは愛する者も同様だった。Dボゥイはアキに視線を移し、彼女も彼の目を見た。だが無言だった。アキも何か語りかけようとしたが、何も言えなかった。何か言えば、それはまるで今生の別れの言葉になってしまう。必ず生きて帰るからこその、無言だった。
「ペガス!!」
「ラーサー!」
 昇降の台で宙吊りにされたペガスの背部にDボゥイは上がると、背部パネルを展開したペガスの内部、テックセットルームへと搭乗する。そしてパネルが閉じると、フリーマンはコンソールを操作して調整を開始した。
「擬似クリスタルエネルギー、増幅開始!」
哀れな調査員が取り込まれたラダム樹の花が光り輝く。そしてペガスもそのエネルギーを受けてボディの各所から光の明滅を繰り返し始めた。
モニターには「エネルギーレベル3」と表示され、徐々にエネルギーレベルは上昇する。
「く……ぐっ! うぉあっ!!」
 ペガスの中でDボゥイは呻いた。テッカマンの再生。新たな命がラダム樹の花から注ぎ込まれていく。
「うぅっ……うあぁっ!!」
 エネルギーレベルが5、6と徐々に上がるにつれ、Dボゥイの苦悶は増していく。身体の各所にテックセット時の赤いラインが走り、肉体が再構成される様な感覚に陥っていく。
スペースナイツのメンバーはその3時間をペガスの前で待ち続けた。ずっとペガスを見上げるアキとノアル。無言で酒を呷るバーナード。椅子に座って、ただ時間が早く経過して欲しいと願うミリィやバルザック。彼らは誰しもが、オペ中の手術室の前にいる気分だった。
そして二時間が経過し、エネルギーレベルが8へと辿り着こうとしたその時、警報が鳴った。無言でフリーマンはコンソールを操作すると、研究ブロックにある大きなモニターが点灯した。外の映像であるその様は、今まさにこの基地が襲撃されようとしている状況でった。
「ラ、ラダムだ!!」
「何でここが……」
「ちっくしょぉ! こんな時に!!」
 ノアルは飛行ラダム獣や水中ラダム獣の一群を見て歯噛みした。
「慌てるんじゃねぇ! 後一時間踏ん張って見せればいいだけの事よ!」
 その時、バーナードがライフルを片手に言った。そして四人の部下達に号令する。
「よし野郎共、準備は良いか? 援軍の到着は一時間後だ。必ず来る! それまでここを死守するのが俺達の任務だ!!」
「了解!!」
 兵士達が一斉に声を上げる。この時、死守と言う言葉をバーナード軍曹は使った。必ず生きて戻れ。そういつも命じていた彼が、部下達に死んでも守れ、と命じている。この時、この場所を守る。それが彼らの大一番だった。
「俺達もグズグズしちゃいられねぇぜ!!」
「あぁ、Dボゥイが出てくるまではな!!」
「守って見せるさ!!」
 ノアルもバルザックに声を掛けて、拳を握りながら気合を見せる。ソルテッカマンでラダム獣を全て狩り尽くす、そんな意気込みで彼らは出撃するつもりだった。
 そしてアキはペガスを見上げて、言った。
「必ず生きて戻ってきてくれる……信じてるわ、貴方を!!」
 新たなテッカマンになるとかそんな事は彼女にとってはどうでも良かった。ただ、生きていて欲しい。それが愛する者の考える、唯一無二の願いだった。
「ふふふ……エビルとの違いを見せてやる。裏切り者の貴様の命もここまでだ!」
搭乗型のラダム獣に乗って基地を見下ろすのは、モロトフがテックセットした姿であるテッカマンランスだ。彼は水中ラダム獣の足跡からこの施設を探し当て、ラダム獣を統率してこの基地を襲撃に来たのだ。そして、この施設の所在地を他のテッカマン達に報告するつもりは毛頭無い。オメガに認められたいと言う功名心しか無かった。
テックセットルームで苦悶の表情を続けるDボゥイ。スペースナイツの命運と地球の未来は、調整成功の可否に掛かっていたのだった。


☆っはい。ブラスター化への予期第一話でした。戦闘シーン無いとほんっとに会話だけで話進むよね。つかこの基地がどんな構成なのか、とか一切関連話無し。実験施設と医療施設と修理施設&格納庫。何が元なのかと言う話も出やしない。フリーマンは一体どんな手を使ってこの基地を新生スペースナイツ基地に仕立てあげたのでしょうかそれだけが凄い気掛かりです(笑)
ところで調査員の素体テッカマンさんは実験に使われてどうなるんでしょうか。と思ったらちゃっかり41話で再登場しているので、別に中の人はエネルギーをブラスターブレードに吸われてお亡くなりになった訳じゃないかも知れません、と次の話で書きましょう(笑)作画監督須田さんなのに上がったり下がったりでしたね。と言う感じで3で御願いいたします。