第42話 激突! 赤い宿敵(1992/12/8 放映)

俺らホントに子安が大好きです(笑)

脚本:あみやまさはる 絵コンテ&演出&作監&メカ作監板野一郎
作画評価レベル ★★★☆☆

第41話予告
戦うたびに記憶を失うDボゥイ。宿命の名の元に、研ぎ澄まされたエビルの技がブレードに炸裂する。
次回、宇宙の騎士テッカマンブレード「激突!赤い宿敵」仮面の下の涙をぬぐえ。


イントロダクション
ブラスターテッカマンに進化したDボゥイの肉体からは、組織崩壊の症状は消えていた。だが、
「ね! Dボゥイ! ブルーアース号の修復は、順調な様よ? あ……!」
「なぁ……アキ。何度も言わせないでくれ」
「でも……急にそんな事言われたって……今までずっとDボゥイって呼んでたんだし……」
「俺を……Dボゥイと呼んでいた?」
「え?」
「どうして俺を、Dボゥイと呼ぶんだ?」
「あ……どうしたの? 突然?」
「大体、Dボゥイって言うのは、どう言う意味なんだ?」
「Dボゥイ……!」
「それで、Dボゥイの身体が、どうしたって言うんだ!?」
「彼は今、記憶の混乱を起こしている」
「自分がDボゥイと呼ばれている事さえ分からないのよ」
「そんな……!」
Dボゥイは、進化の副作用により記憶を失い始めていた。そんな中、パワーアップしたエビルが再び襲い掛かる。Dボゥイは自分の症状を自覚する事無く、エビルに立ち向かうのだった。
「……さらばだっ!! ブレードォっ!!」
「ぐぉわああぁぁぁぁっ!!」




 辺りに沈黙が流れた。
 テッカマンエビルの必殺の一撃は、ブレードの素体が剥き出しになっている腹部を捉えたかに見えた。
「……くっ!?」
 しかし間一髪、テッカマンブレードは身体を捻ってその一撃をかわしていた。ランサーの槍はブレードの左わき腹を少しだけ抉っているだけにとどまっている。
「くっ……はっ!」
 テッカマンブレードはランサーを回収して、そのまま飛び上がって植物プラントの天蓋をぶち抜いた。
「くっそぉ!!」
 ほんの数センチの差でかわされてしまった事をエビルは悔しがる。そしてエビルもスラスターを起動させ、ブレードの後を追う。氷の大地を貫通して出てきた二人は、再び空中で交差し激しい火花を散らした。数瞬剣戟を行った後、二人は距離を取って着地する。
「こうやって戦うのは久し振りだね。ミユキが死んだ以来かな?」
「シンヤァっ……!」
「腕が疼いていたよ……兄さんに俺の動きが見切れるかな!」
 妹の事を言われブレードが憤ったその直後、突然数十メートル離れていたエビルが消え、目の前に現われる。
「う!? うぉあっ!!」
 一瞬で距離を詰めたテッカマンエビルはテッカマンブレードの頭部を激しく蹴った。ブレードは仰け反りながら吹っ飛ばされ、更にまた消失する様に掻き消えたエビルはブレードが吹っ飛ばされた後方に一瞬で移動し、
「とぉあっ!」
その背中を蹴り下ろす。ブレードは空中から氷の大地に叩きつけられた。
「以前のエビルとはまるで動きが違うわ!」
「まるで別人の様だぜ!」
「もぉ! ノアルとバルザックは、まだなのぉ!?」
 指令所に集まった他のスペースナイツのメンバーは、基地外にあるカメラで二人のテッカマンの戦いに注視している。本田もアキも、テッカマンエビルがまるで消失した様に超高速移動するその様を見て驚愕していた。
「チーフ! スピード、パワー、瞬発力、過去のデータと比べて、全て30%アップしています!」
 ミリィがキーボードを叩きながら、現状のテッカマンエビルをそう分析する。
「それじゃあ、エビルもDボゥイと同じ、進化したテッカマンになっちゃったワケぇ!?」
「いや、そうではない。ブラスターテッカマンになっても、普段の戦闘力は変わらないはずだ」
 フリーマンの言う「普段の」と言う言葉は、ブラスターテッカマンに進化する前の一段階目、ノーマルテッカマンの状態の事を言っている様だ。
「それじゃあどうして!?」
「恐らく、人為的に肉体を極限状態にまで鍛えた結果だ」 
「最近姿を見せないと思っていたらそういう事だったのかい!」
 本田が合点がいった様にそう言った。実にテッカマンエビルがスペースナイツの前に姿を現したのは半年以上の期間に及んでいる。シンヤが療養中に行ったトレーニングの成果は確実に実を結んではいるが、ブラスターテッカマンの爆発的な能力に比すれば、未だエビルはブラスターテッカマンに及ぶモノではないとフリーマンは判断したのだ。
「いつまで穴の中に隠れている気だい? 兄さん!」
 エビルが大穴に沈んだブレードにそう声を掛けた。ブレードにしても、数度槍を交えた段階でいつものエビルとは違うと感じてはいたが、まさかここまでの実力の差があるとは思っていなかった。
「うおわぁぁっ!!」
 勝機が見出せないブレードは、突如穴から飛び出して奇襲を仕掛けたが、エビルはその行動を読んでいた。また超高速でその突進をかわし、ブレードの背後を取って背部スラスターを全開にする。
「今までと同じだと思ったら大間違いだよ! 兄さんっ!!」
 背後から突進したエビルは、ブレードの背中に強かに体当たりした。
「ぐああっ!!」
 体当たりして氷壁に突っ込み、そのまま巨大な氷の山々を貫通する。氷山を四度貫通した所で、エビルの突進はようやく止まり、ブレードは氷壁に埋没したまま動けなくなった。
「ふはっはっは……どうしたんだい兄さん? 勝負はこれからだよ!」
 エビルはブレードとの戦いを楽しんでいる。両腕にラムショルダーを構えて、第二ラウンドだと言わんばかりにブレードを攻撃しようとしたが、
「何っ!!」
 突然邪魔が入った。ノアルのソルテッカマン二号機がテッカマンエビルを砲撃する。
「クズ共がっ!」
 ブレードがその動きを捉えられないのと同じく、エビルにソルテッカマンのフェルミオン弾は全く当たらない。しかしエビルがノアルの攻撃に気をとられている間に、氷の山に埋没したテッカマンブレードバルザックの一号機改が救出した。
「行くな! Dボゥイ!」
「なにっ!?」
「ここはノアルに任せろ!」
 バルザックはそのままブレードに肩を貸すと、脚部のスラスターを吹かして基地に帰還する。
「ははっは! どうした! 何処を狙っている!!」
 ノアルとテッカマンエビルの交戦は二度目となるが、今まで以上の速度を持つエビルにフェルミオン弾を的中させる事は出来ない。だが、ノアルはエビルに命中させるのが目的ではなかった様だ。
「へっ! 分かんねぇのかよぉっ!!」
 氷山の頂上に降り立ったテッカマンエビルには標準を合わせず、その下の氷の山にフェルミオン弾を叩き込む。すると、連鎖的に爆発して頂上にいたエビルを巻き込んで崩落を起こした。
「何っ!? うっ! ぐぉぉっ!?」
 どうやら、その氷山には爆発物が取り付けられていたらしい。今までの銃撃はそのトラップゾーンにエビルを引き込む為の陽動だったのだ。氷山の崩落に巻き込まれたテッカマンエビルは、氷の大地をぶち抜き、湖の水中にまで落とされる。勿論、数トンの氷の崩落に巻き込まれたとしてもテッカマンを倒せるワケではない。ブレードを救出する為の時間稼ぎの為にエビルをトラップに引き込んだのだ。
エビルは直ぐに湖から脱出して、先程までブレードと戦っていた場所に戻る。が、其処には誰もいなかった。
「ふん、逃げたか、ブレード……つぇあっ!!」
 構えていたラムショルダーの刃を、傍らにあった小さな氷山に対し、気合を込めて振る。
「まあいいさ。俺がいつまでも兄さんの下ではない事が分かっただろう。ゆっくりと兄さんが出てくるのを待たせてもらうよ」
 そうエビルが言った直後、氷山が斜めに定規で切った様にずれて崩れていく。ラムショルダーの刃はテックランサーに比べれば非常に短い刃なはずだった。普通に考えればそんな刃で小さいとは言え数メートルもある氷山が切れるワケが無いのだが、エビルはその驚異的な能力でかまいたちの刃を走らせ、氷山を叩き斬ったのだろう。
その実力は、確実にかつて倒した師匠であるテッカマンアックスすら越えていると過言ではなかった。
「離せ! 何故止める! 俺はエビルと戦わなければならないんだ!」
 ほぼ無理矢理にテックセットを解除させたDボゥイを、ノアルが羽交い絞めにして指令所に連れてきた。だがDボゥイはその押さえ込みから脱してノアルを一本背負いで投げる。周りにはDボゥイを心配して集まったスペースナイツの面々がいて止めようとするが、彼は是が非でもエビルと戦う気でいた。
「君はこれ以上テッカマンになったら、記憶を失っていくのだ!」
「記憶!?  何を言っている!!」
 フリーマンがそう言って説得しようとするが、Dボゥイには心当たりが無い。何故仲間が止めようとするのか見当も付かないばかりか、戦いの邪魔をした事に相当腹を立てていると言った状態だった。
「ディ、Dボゥイ……あ!」
「俺の名は相羽タカヤだ! 何度言えば分かるんだ!」
 アキがそれを見かねて声を掛けようとしたが、Dボゥイは激昂する様にそう言った。
「ほら見ろ! お前は、自分のニックネームさえ忘れちまっているじゃねぇか!」
 ノアルがそう言ったが、やはりDボゥイは自分に起こった異変に気付く事はない。
「アキ! 俺は何処かおかしいのか!?」
「ぁ……」
 怒りの表情を向けられて、アキは思わず視線を逸らす。自分は相羽タカヤだ、と言われたら最早言葉を掛ける事すら出来なくなった。
「はっ、みんな何か勘違いしてるんじゃないのか?」
「Dボゥイ……!」
 ノアルはそんな風に言うDボゥイに、至極落胆した。数日前の信頼する仲間同士の絆が殆ど消えて、まるで出会った時のDボゥイの様に、今の彼は何を言っても聞かないデンジャラスな少年と化している。
「俺は! 俺はエビルを倒すんだ!」
 そして再び戦う為に、司令所を出て格納庫へと向かおうとするDボゥイ。
「待てよ!」
 その後をバルザックが追った。絶句していたノアルも、説得する為に彼を追おうとするが、フリーマンがそれを故意に止めた。
「自覚していないDボゥイに、事実を伝えるのは難しい」
「でも! アイツ本人が自覚した時には、もう遅いんだ! もう……」
 ノアルは歯噛みする様に下を向いて言う。アキも、ミリィも皆Dボゥイが記憶の混乱で心無い発言をした事を理解してはいる。だがそれでも、今まで苦難を一緒に乗り越えてきた彼らにとっては、それが一番辛い現実だった。
 その頃、ORSのラダム獣育成プラントではフォン・リーがホログラム通信でラダムの首魁であるテッカマンオメガと対面していた。ラダム獣投下の統括報告を行っている様だ。
「ご苦労だったな、ソード」
「はっ、降下予定のラダム獣は間も無く全て地上へと降り立ちます」
 今現在、ラダム獣の投下は一切行われていない。既に予定数を越え、これ以上は必要無いと言う事らしい。
「これで一切の準備が整ったワケか……後はこの私と共にラダムの母艦が発動した時、地球は我々ラダムのモノ……嬉しくないのか?」
「あ……いえ!」
 テッカマンオメガが全ての準備段階を終えた事を聞いて歓喜に奮えるが、フォンの表情に喜びの表情が無い事を怪訝に思い聞いた。フォンは慌てて取り繕う様に言う。
 そして育成プラントのモニター室に自分の弟がいない事を不思議に思い彼女に尋ねる。
「エビルの姿が見えんが?」
「お一人で、ブレードを倒しに行かれました」
「なに?……今のブレードは我々に対する憎しみだけで戦っている。奴を侮ってはならぬぞ。ソード、ならば何故お前はエビルと共に戦わんのか!?」
 突然口調が変わり、オメガはテッカマンソードであるフォンを叱責する。
「私は、オメガ様より命令を頂いてはおりませんので」
 だがフォンは、頭を垂れて冷静に言った。オメガだけに忠誠を誓っていると言う態度である。
「相変わらずだな……では改めて命ずる。エビルと共に裏切り者ブレードを倒すのだ」
「分かりました」
 使命を受理して、改めてフォンはブレード打倒の為にアラスカに向かう事を決意し、言った。それを見て、テッカマンオメガは溜息を漏らす様にフォンに語りかける。
「……シンヤはタカヤの事になると冷静さを失う事がある。だが私は、この母艦と一体となり動く事は出来ぬ。フォン、弟の事を頼んだぞ。……お前達を、失いたくない……」
感慨深くそう言うと、ホログラム通信が消えていく。フォンは愛しい人に手を伸ばそうとする。だが実体ではない彼に触れることは敵わない。
「オメガ様……ケンゴ……」
フォンはテッカマンオメガの仮面の下に、相羽ケンゴの姿を思い描いていた。左手の薬指にある指輪を見ながら過去を思い出す。
大学の研究室時代に知り合った相羽ケンゴと言う男は、どんな男性よりも魅力的で、天才肌な人間だった。それでいて思慮深く、時には豪放で皆を包み込む優しさを併せ持つ、リーダーに相応しい才覚を持つ男だった。
 知り合ってから間も無く互いに惹かれあい、恋人同士となった後でもケンゴはフォンに一層愛情を注いだ。研究に没頭するとベッドに向かう事すら忘れてしまうフォンに、優しく毛布を掛けてくれる様な、そんな男だった。
 ――――ケンゴはあたしを見守ってくれた。どんな時でも……。
 そして結婚指輪を渡された時の幸せなあの一瞬を、フォンはいつでも思い起こせる。
「今度は私がケンゴを、いや、オメガ様を守って差し上げる番。例えどんな姿になっても……!!」
 フォン・リーはそう言いながら、テックセットした。人の姿から鎧の甲冑を纏ったテッカマンソードとなる。
彼女のテッカマンオメガへの忠誠は愛情故だった。だが、オメガへのその愛情が永遠に実を結ぶ事は無い。
テッカマンブレードとエビルの対戦から数十分、アラスカ大地を踏みしめながら、エビルが言う。
「兄さん! インターバルは終わりだ。そろそろ第二ラウンドを始めようじゃないか?」
 仮面の眼光を光らせながら、エビルはブレードとの対戦を心待ちにしているのだった。 
「ちょっとDボゥイ! 駄目だってばぁ!」
「邪魔するな! 俺はエビルを倒さなければならないんだ!」
 格納庫では、レビンがペガスの前でDボゥイを押しとどめていた。そんな彼に本田は冷静に言う。
「相手は攻めてこねぇんだ。自分から攻撃を仕掛ける事も、無いだろう」
「あいつが俺を呼んでいるんだ!」
 実際に、テッカマンエビルは精神感応で何度もDボゥイを呼び掛けていた。
「おい! 少し顔貸せや」
 そう言って、Dボゥイの肩を叩いたのは、ソルテッカマン着用のアンダースーツを纏ったバルザックだ。Dボゥイは、バルザックに引っ張られる様に格納庫の外へと連れて行かれた。そんな二人を見て怪訝な表情をする本田とレビンだった。
 格納庫の外の壁に二人は寄り掛かると、バルザックはDボゥイに語り掛けた。
「なぁ、Dボゥイ」
「ディ……ボゥイ? あぁ、皆が俺につけたニックネームだったな」
 何時の間にそんなニックネームを付けたんだ、とDボゥイは思う。これはある意味かなり重篤な記憶障害だった。Dボゥイと呼ばれていたその事を忘れると言う事は、そう名付けられた経緯を思い起こせなくなったと言う事であり、自分の記憶自体が曖昧になっていく事を示している。
今現在はテッカマンエビルと戦わなければならないと言う強い意志があるから良い物の、テッカマンになって戦えば益々記憶障害が起こり日常生活に支障を来たす可能性があった。だからこそ皆が彼を止めたのだ。 
「Dボゥイ、止めても無駄の様だから止めやせんが、その代わりアキの為にDボゥイと言う言葉だけは忘れるな」 
「……?」
 だが、バルザックは敢えて彼を止める気は無かった。怪訝な顔をするDボゥイに更に語り掛けた。
「お前は確かに相羽タカヤさ。だがな、アキ達はDボゥイって名前のお前と戦ってきたんだ。Dボゥイって名前のお前とな。今のお前にとっちゃ、どうでもいい言葉かも知れない。だが、アキにとっては、自分とお前を繋ぐ大事な言葉なんだ。それだけは、憶えておくんだな」
 バルザックは強調するように「Dボゥイと言う名前のお前」と言う言葉を繰り返した。そう、スペースナイツのメンバーにとってはDボゥイと言う言葉は希望に等しい言葉だった。だからこそノアル達は落胆したのだ。相羽タカヤではない、Dボゥイと言う人間と戦ってきた事を誇りに思っていると言ってもいい。
 そしてアキにとって、その言葉は絆を象徴していた。二人を繋ぐ為の、大切な言葉なのだ。
「ま、女捨てて此処に来た俺の言う台詞じゃねぇけどよ。じゃあな!」
「あ……バルザック……」
 去っていくバルザックの背中を見る。そして、皆が呼ぶDボゥイと言う言葉を深く考えようとするが、
「迎えに来たよ……兄さん?」
「エビル……!!」
 Dボゥイはテッカマンエビルの精神感応でその思考を邪魔される。基地に一歩一歩近付く敵の存在を感じ取って、Dボゥイは再び格納庫へと向かった。
「チーフ、このままでは基地に……!」
ソルテッカマン、出動!」
 基地外のカメラで近付いてくるエビルを見て、フリーマンはそう指示を出した。だがその直後、
「フリーマン! Dボゥイの奴が!」
「チーフ! ペガスが出撃しました!」
「Dボゥイ……!」
 やはり避けられない戦いなのか。フリーマンはDボゥイの記憶障害がこれ以上進行しない事を祈るのだった。
「来たか!」
 雪煙を巻き上げて近付いてくる者達を見やるエビル。それは青と緑の機械鎧、ノアルとバルザックソルテッカマン達だった。そんな二人に、お前らには興味が一切無いと言った感じでエビルは尋ねる。
「ブレードはどうした?」
「俺達が相手じゃ、不服の様だな!」
「当然だ」
「それはどうかな? さっきみたいに返り討ちにしてやらぁ!」
 その言葉を契機に二対一の戦闘が始まった。テッカマンエビルを囲む様に砲撃するノアルとバルザック
「このクズ共が!」
 エビルは吐き捨てるようにそう言うと、ソルテッカマン達の猛攻を軽々と回避する。そして、
「なにっ!?」
 一瞬でバルザックの直ぐ傍に近付き、通り過ぎると同時にソルテッカマン一号機改の拡散フェルミオン砲の発射口を二門とも叩き斬る。バルザックはバイザーに砲が完全に使用不能になった表示を見て狼狽した。
 更に追い討ちを掛ける様に、一号機の頭部を掴んで潰す様に氷の板に叩き付ける。
「どぉわぁっ!」
 一メートルはある分厚い氷を貫通し、バルザックは氷湖に沈み込んでしまう。
「あの野郎ぉ! はっ!? バルザァァック!?」
 相棒が敵に襲われているのを見た直後、突如飛来してくる物体があった。それは誰であろう相棒であるバルザック本人だった。フェルミオン砲を構えているノアルは、飛来してくるバルザック機を受け止められないと判断して、直ぐに回避行動を取った。
「ぬぅおぁっ!!」
 また氷の板をぶち抜いて湖へと沈むバルザック。これで二人の、ソルテッカマンのフォーメーションは完全に崩されてしまった。
「畜生ぉ何処だっ!? 出てきやがれ!!」
 先程からテッカマンエビルの姿を視認出来ない。しかしノアルがそう言った直後、テッカマンエビルの仮面が目の前に現われた!!
「なにぃっ!?」
「はあぁぁっ!!」
 そのままノアルの二号機をアッパーして打ち上げる。数メートル上がった後、テッカマンエビルはその打ち上がった真上に一瞬で移動し、今度は蹴り落とす。
「ぐぉあぁっ!」
 ノアルが絶叫を上げて飛んでいった先は、先程バルザックが沈み込んだ氷湖への穴だった。
 ソルテッカマンではテッカマンには対抗できない、と言う問題ではない。テッカマンエビルは全く本気で二人を相手にしておらず、まるで壊れにくい玩具を弄んでいると言っても良かった。だがもうこの二人を相手にして遊ぶのも飽きてきた所だ。狙った通り二体同時に動けなくなった所に、トドメの一撃を放とうとする。
「口で言っても分からん奴には教えてやる。貴様らのその命でなぁっ!! サイボル――――!?」
 その時、エビルの背後に飛来する物がいた。Dボゥイが搭乗した機動兵ペガスだ。
「ふっ! テッカマン! ブレードォっ!!」
 雄叫びと共にテッカマンブレードが出現、ノアル達が沈んだ穴の前に着地して弟に相対した。
「エビル!」
「待ちかねたぞブレード!!」
 双子の兄の言葉に奮起するテッカマンエビル。ようやく本番がお出ましだ、と言わんばかりだった。
そしてブレードの足元では湖から浮き上がった二人が顔を出したきた。
「痛ぅ……強烈だな」
「死ぬかと……思ったぜ……Dボゥイ!?」
「馬鹿野郎! 何故!!」
 氷の板に掴まり、ノアルはテッカマンブレードを見上げてそう叫んだ。
ソルテッカマンで倒せる相手じゃない!」 
「くっ」
本当はDボゥイに戦わせない様に、Dボゥイを守る為に出撃したはずなのに、結局ブレードに頼る事になった事を、ノアルは歯噛みする。
「兎に角ここは、俺に任せろ!」
「逃がすかっ!」
 ブレードは二人に害が及ばぬ様に飛び上がってエビルを誘う。エビルにしても、これ以上雑魚を相手にするつもりは無いと言った感じでブレードを追い、先程の高速移動を使ってブレードの背後に回った。
「であぁっ!!」
「くぉぉっ!!」
 振り下ろした槍を槍で受け止めるブレード。初撃は何とか受け止めたが、その速度は急激に上がっていく。ブレードが受け止められなくなるのも時間の問題だった。
「あ! どうやら此の先の様ね!」
 丁度エビルとブレードの交戦が始まった時、テッカマンソードはアラスカに到達し、二人の精神感応波を頼りに、急行した。
「うおぉぉぉっ!!」
エビルの猛攻は果てしなく続く。遂にブレードはその剣戟を受け止められなくなり、
「ぐ! が! うぉあっ!!」
 右に殴られ、左に蹴られ、更に槍の柄で打ち下ろされる様に殴られた。
「昔はよくこうして稽古をしたねぇ!? 兄さぁんっ!!」
「ぐぅっ!! シンヤァっ!!」
 エビル、相羽シンヤは楽しんでいた。その気になれば直ぐ様致命傷を負わせる事も難無く行えるはずのエビルだったが、敢えてブレードをいたぶった。
「子供の頃から敵わなかった俺が……こうして兄さんを追い込んでるなんて……!」
歓喜の絶頂にエビルはいた。仮面の下は恐らく恍惚の表情をしているに違いなかった。そして防御の要であるブレードの槍を弾き飛ばし、腹を凪ぐように強かに蹴った。
「どぉわっ!」
吹っ飛ばされたブレードを追うエビルはそのままブレードに激しく体当たりする。その勢いでブレードは氷山に磔にされてしまう。これでは先程と全く同じ状況だった。大の字で磔にされたブレードを見ながら、エビルは傍らに突き立っていたブレードのランサーを拾い上げる。
「今まで梃子摺っていたのが嘘の様だ……それとも俺が強くなり過ぎたのかなぁ!?」
「う……くぅっ……」
ブレードは失神寸前だった。一歩一歩二本の槍を携えて近付くエビルを朦朧としながら見る。
強い。久し振りに再会した弟は脅威的な強さを伴って自分の目の前にいた。Dボゥイはこれまで何度も死を予感した事はあったが、ここまで圧倒的な死を感じた事は無かった。
「畜生ぉ……くっ!」
「う! いつも大事な時にぃっ!!」
ようやく穴から這い出た二人のソルテッカマン達は、ブレードに迫るエビルに照準を合わせたが、撃てない。ノアルのフェルミオン砲は先程の攻撃で機能障害を起こし、バルザックの一号機はそもそもフェルミオン砲の発射装置自体が無くなっている。二人は戦力外にいる事を痛感して悔しがった。
テッカマンエビルは、振り上げた槍を十字手裏剣に変えると、ブレードの装甲の無い腹部に目掛けて動けない様に氷壁に突き立てた。ブレードはランサーの内側の刃で腹部を傷付けられ痛みで絶叫を上げる。
「ぐぉぉっ!!」
「兄さん? 自分の武器で死ぬなんて、この裏切り者には相応しい死に方とは思わないか?」
更にエビルは、ブレードのランサーを二つに分離すると、
「ミユキと同じ運命を辿らせてやるよ!!」
「ぐぉぉっ!! があぁぁあっ!!」
双剣になったランサーをブレードの両腕に突き刺し貫通させた。これで氷壁に完全にブレードは縫い込まれたも同然となった。
「くぅはっはっはっは!」
まるで子供の様な無邪気な笑み、いや、邪悪な嘲笑を浮かべるエビル。そして飛び上がると、
「これで遂に俺は越える事が出来るんだよ! 兄さんをねぇぇっ!! サァイボルテッカァァ!!」
「Dボォォイィっ!!」
 ノアルが絶叫した直後、PHYボルテッカは確実にテッカマンブレードに命中した。鎧が全て消え去り、エビルのランサーもブレードのランサーも、ブレードが縫い付けられた氷壁すらも蒸発した。数十メートル規模のクレーターが出来上がるがしかし、当のブレードはその中心で浮かび、完全に消滅していない。
「何っ!?」
異様な光景だった。それを見てエビルは激しく動揺する。クレーターの中心で浮いているその黒い人型は、正にブレードの素体とも呼べる姿だった。
「な、何が起こったんだ……!?」
そうエビルが言った直後、ブレードに異変が起こる。素体部分を中心にして、鎧が再構成されていく様をエビルは目撃した。白い重装甲が纏われるその異変を目にして、エビルは戦慄する。
「へ、変身!?」
「エビルぅぅ……うおおぉぉぉっ!!」
ブラスター化を終えたブラスターテッカマンブレードが吼える。そしてエビルがいる空中に突進した。
「ば、馬鹿なぁぁっ!?」
 エビルは今までに見た事が無いテッカマンを目の前にして動揺してはいたが、冷静にその攻撃をかわそうとした。しかしブラスターテッカマンブレードの超速はエビルの動きを圧倒していた。刹那の間に頭部を掴まれると、そのまま背後の氷山の中腹に激突する。
「ぐぁっ! がぁああぁあっ!?」
 氷雪に塗れ、エビルは何とか氷山から脱したモノの、直ぐ様上空から超速で飛来したブレードに押し潰された。ブラスターブレードテッカマンエビルの頭部を掴み引き摺り押し潰し、何度も地を舐めさせた。
「あれはっ!?」
 氷山の山々が崩れ去る異様を遠巻きにしたテッカマンソードは、改めてその場が二人の交戦場所だと悟った。しかし、ボルテッカフェルミオン光無しで、一瞬にして数個の氷山を崩落させる様な戦況を彼女は目にした事が無かった。
 ようやく引き摺り攻撃が止み、テッカマンエビルは精神的にも身体的にもボロボロだった。そして白き白鳥の様な重装甲を纏ったテッカマンが目の前に立ちはだかっている。
「うおおぉぉぉっ!!」
 ガコンとボルテッカ発射口を顕わにするブラスターテッカマンブレード。16個モノフェルミオンレセプターを目にしたエビルはやはり驚愕し、戦慄し、恐れた。
「くぅっ……はぁっ!」
 だが、テッカマンランスの様に恐怖の淵に立たされて混乱する様なエビルではない。冷静にエビルは自分の能力の最大を使ってそのブラスターボルテッカを回避しようとした。
「ボォルゥテッカアアァァっ!!」
 爆発する様にブラスターブレードが叫ぶ。ボルテッカを超える超ボルテッカではあるが、以前ランスに放ったそれとは違っていた。
「なにぃぃっ!?」
 面で襲ってくるブラスターボルテッカではない。まるでそのフェルミオン光は誘導する様な、まるで誘導ミサイルの様にエビルの退路を断ち、恐ろしいエネルギー量で両側から飛来した。
 ブラスターボルテッカは面で放出する砲撃と、全方位に撃つ事が出来る誘導する様な砲撃を使い分ける事が出来る様だ。誘導するボルテッカと言えば、エビルのPHYボルテッカも似た様な事が出来るが、エネルギーの量は段違いだった。
 エビルは退路を断たれブラスターボルテッカを受ける寸前だったが、間一髪超音速で飛来したテッカマンソードがエビルに体当たりする様に抱えてその砲撃から救った。そして直ぐ様撤退する。行き場を失った超ボルテッカのエネルギーは、氷山の山々にぶち当たって光の柱の爆発を起こす。
 テッカマンソードは、エビルを抱えたまま背後を見た。フェルミオンの光が止んだ後に、氷雪が数百メートル上空に巻き上げられ、白一色になっている。まるで大自然が起こす、火山の爆発の様な、マグマの放出の氷雪版と言った状態だった。
 ソードはブラスターテッカマンブレードの姿を一瞬、目撃しただけだったが、この力はラダムにとって、いやオメガであるケンゴにとっては確かに最大の脅威になるだろう。そんな風に痛感した一瞬だった。
「うぅ……っ!」
 エビルを討ち漏らしたブラスターブレードは、そのまま地面に突っ伏して意識を失った。
 次に意識を取り戻したのは、基地のメディカルルーム内だった。
「チーフ、Dボゥイが目を覚ましました!」
 ミリィが傍らにあった通信機でフリーマン達を呼んだ。
「う……くっ……ミリィ?」
「良かったぁ! あ……」
 全身包帯だらけになったDボゥイは起き上がって傍に置いてあった花瓶の花に意識が向いた。
 じっとDボゥイが花瓶に生けてあったアマリリスを見る。その直後フリーマン達が病室に入って来た。
「あ……ごめんなさい」

 Dボゥイがその花をじっと見ているのを見て、アキは思わず謝ってしまう。
「いけない……あたしったらつい……」
部屋に一瞬、気まずい空気が流れた。
 アマリリスと言う存在が、Dボゥイにミユキを連想させると思い、メンバー内ではどちらかと言えばその花をDボゥイの前に出すのをはばかっていた所があった。だがミリィもこの花が好きだったからか、思わずDボゥイの見舞いに持ってきてしまったらしい。
 しかし、Dボゥイの反応は今までとは違った。
「綺麗な花だ……」 
「え?」
「この花を見ていると、何だか気持ちが安らぐ……」
「ディ、Dボゥイ……」
「アキ? この花の名前、何て言うんだ?」
 アキはそう問われても絶句して応えられなかった。代わりにノアルが逆にDボゥイに尋ねる。
「憶えてないのか?」
「それは……ミユキさんの……」 
「……! ミユキの……」
 ミリィに言われて、Dボゥイははっとなった。
 そして一瞬だけ絶句したアキではあったが、彼女は直ぐに笑みを浮かべながら言う。アマリリス花言葉さえ知っていたDボゥイが今、記憶の混乱と喪失の渦中にいる。そんな最中にDボゥイがいたとしても、それを支えようと意を決した様に、優しく、諭す様に言ったのだ。
「これは、アマリリスって言うのよ」
「アマリリス……」
「ミユキさんが好きだった花よ……」
「ミユキが……」
そう言うとDボゥイはミユキの姿を思い起こした。だが、胸の前に持っていた花が、まるで空白で消された様に、どうしても思い出せなかった。
そして狼狽しながら、アキの肩に掴み掛かりながら叫ぶ様に言った。
「どうしてアキが、ミユキの好きな花を知っているんだ!?」
「……あなたから聞いたの」
「なにっ!?」
――――これ以上テッカマンになったら、お前は記憶を失っていくんだぞ!?
 先程の、ノアル達との言葉は何とか憶えている。テッカマンになれば記憶を失う……これがブラスター化の副作用であり、自分が人に教えたと言う事実を完全に思い起こせない状態をDボゥイは認知した。
「俺は……」
「その通りだ。ブラスターテッカマンに進化する事により、君は肉体の組織崩壊を免れた。だが……
崩壊は頭部に集中し神経核は麻痺して、君は徐々に記憶を失い始めている」
 病室に数瞬沈黙が流れた。
そして突然ドアが開いてレビンが歓喜満面の表情で本田と一緒に病室に飛び込んできた。
「みんなぁ! ブルーアース号が完成したわよぉ!!」
「ブルー……アース?」
 Dボゥイはまた、聞き慣れない言葉を聞いて怪訝な表情をした。
「まさか! ブルーアース号まで!?」
 ノアルがそれを聞いて動揺した。ブルーアース号、Dボゥイ達がそのスペースシップで何度も宇宙へ上がった事を憶えていないと言う事は、今まで戦ってきた事実までが曖昧になってしまうと言う事を意味していた。
「ブルーアース……うぅっ!?」
「Dボゥイ!?」
 突然頭が割れる様な衝撃が走る。心配したアキの手を乱暴に振り払うと、
「俺は……俺は……!!」
 Dボゥイは、自分が改めて非常に危険な状態にあると言う事をようやく自覚した。
 そして恐怖した。テッカマンになって戦う事、兄や弟を葬りラダムをこの世から抹消する事、その目標を思い起こせなくなったら、自分はこれからどう戦えばいいのかと、想ったのだった。
 その頃、テッカマンエビルは相羽シンヤの姿に戻って、月のラダム基地に帰還していた。ブラスターブレードの脅威的なパワーにねじ伏せられ、彼は左腕や身体のあちこちに傷を負っていた。
 本来なら培養球に入って治療しなければいけない所だったが、どうしても可及的に司令官に聞かねばならぬ事があったのだ。
 シンヤはテッカマンオメガの前に辿り着くと、跪いて尋ねる。
「兄さん……ケンゴ兄さんなら知ってるはずだ! ブレードが新しいテッカマンに生まれ変わった事を!」
「新しいテッカマン!? まさか……ブレードが進化したテッカマンになったと言うのか……」
「進化した……テッカマン?」
「そうだ……テッカマンの現在の姿は完成体ではなく、進化の一形態に過ぎんのだ」
「それじゃあ、俺もそれになる事が出来るんだね!」
「うむ……」
 喜ぶシンヤを前にして、オメガは口籠った。
弟の次の言葉を容易に想像出来てしまうからこそ、口籠ったのだ。
「その方法を、教えてくれ兄さん!」
「それは出来ぬ……」
「どうして! 兄さん!!」
「落ち着けシンヤ! 進化したテッカマンになるには、凄まじい体力と精神力が必要だ。その上、成功しても寿命を縮める結果となる」
 彫像の様に動かなかったテッカマンオメガだったが、ここで彼は右腕に持っていた自らのランサー、テックフルートをシンヤの前にかざした。彼を諌める様に、説得する様に。 
「シンヤよ……戦わずともブレードはいずれ朽ち果てる!」
「それなら尚更だ!! 生きている間に、ブレードを倒したいんだ! ブレードが進化したなら、俺も同じく!」
 シンヤは絶叫した。そして寿命が短くなると聞いてもシンヤは止まらないと言う事をテッカマンオメガであるケンゴは熟知していた。
「ケンゴ兄さんは、俺がタカヤより、劣ると言いたいんだね!?」
「違ぁうっ!!」
「だぁったら挑戦さしてくれぇっ!!」
 既に冷静さを欠いて、シンヤの声は裏返っている。ケンゴが幾ら大声で諭しても、厳しく叱ったとしても、絶対に止まる事の無い感情。それ程に今回の敗北はシンヤに大きな傷を残していたのだ。
「一パーセントの可能性でも、俺は構わない!! タカヤを……倒せるのであればぁっ!!」
 両腕をオメガに向かって懇願する様に、自分の命を差し出す様にして、突き出しながらシンヤは叫ぶ。
「ならぬと言ったらならぁんのだぁっ!!」 
「どぉぉしてっ!! どうしてなんだ兄さんっ!?」
「許せシンヤっ!!」
 突如、シンヤの足元に紫色の粘液が染み出して彼の足を絡め取った。それは以前、アックスが使った拘束用の樹液である。
「兄さん! お願いだぁ! ケンゴ兄さん!!」
 シンヤはその樹液で拘束されると共に、徐々に地面に沈みこんでいく。
「兄さぁぁぁんっ!!」
 彼の懇願はずっと続いた。だが、オメガはそれに耳を貸す事は無い。そして完全に樹液に覆われ、地面に埋没すると、辺りに沈黙が流れた。
 そして、地面から染み出した樹液のその表面に、赤いクリスタルが浮かび上がった。
オメガはシンヤからクリスタルを剥奪した。それはつまり、ラダムの侵略作戦の、現場指揮官を罷免したと言う事に他ならなかった。
 だが、彼がそうするのは、弟に対する愛情故である。今回、危うくエビルを失う所だったのだから。
「ケンゴ兄さぁぁんっ!! 出してくれぇぇっ!! 俺は死んでも構わないっ!! このままブレードに勝てずに終わるのは、もぉうイヤだぁぁっ!!」
 幽閉球の中に、全裸で拘束されたシンヤは声の限りに叫んでいる。
「ケンゴにいさぁぁぁん!! 聞いてくれにぃさぁぁぁんっ!!」
 彼の声はもう既に裏返り、涙声になって幽閉球の中で響いた。
だが、その声に応える者は、今の所、誰もいなかった。


☆っはい。せっかく復活した赤い人なのですが、ケンゴ兄さんの過保護っぷりのせいでさっさか途中退場となってしまいました。でもオメガ的にはいずれ朽ち果てるって思ってもそうはいかなかったりするワケで。実際にDボゥイがブラスター化した時点で、ラダム側は詰んでるって言っても過言ではないのですよね。次回からソード編が始まり、やはりフォン、女性テッカマンはしっかり仕事をする人です。今回の作画は正直止め絵が多いですね。せっかく板野作画だと言うのに。と言う事で非常に厳しい評価ですが三で御願いいたします。