極神通!剛力変化!ヤマテック!

ザザン!!

今日も徒然なるままに書きます。今回はマイナーヒーロー漫画第一弾(続くのかよ?)の装甲武神ヤマテック(作者まつい智、昭和61年発行マガジンスペシャル連載、全三巻)を紹介しましょう。
お調子者だがいつも学校で人気者のちょっとスケベな主人公、神牙狷介は実は超古代に生まれた化け物、河童と死闘を繰り広げた一族の最後の生き残り。彼は神牙一族の宿命を背負う事を嫌い、日々楽しく暮らしていきたかった。しかし同級の女の子、工藤梨沙がバケモノに襲われた事を聞き、彼女の事を気にかける。凄惨な事故現場で一人生き残った彼女。10人もの人間が河童に食い殺された現場であった。あえて人を遠ざけるために一人でいることを彼女は望み、またあのバケモノが来ても誰も巻き込まないようにと誓う。孤独に陥っていた彼女に狷介はいつものお気楽で彼女の心を解きほぐしていく。そしてあの夜に何があったのか話を聞くと、心優しい彼女を守る為に戦う事を決意するのだった。
と言う事で変身ヒーロー物。このヤマテックというパワードスーツなんだけど、鎧武者と当時のロボットブームの融合という斬新なデザイン。足が長く腕が短い。ゴツゴツした装甲が邪魔にならない、動き易さを重視したプロポーション。ヘルメットは兜をモチーフに、身体の各所に動力パイプやエアインテーク。背中の装甲には魂の字(笑)、腰には長い装甲が施され、厚い装甲を切り裂く超鋼の日本刀、破魔神牙剣を装備。そして兜の額に当たる部分の剣巴(太鼓等に使われるアレね)の紋章には極神通破砕閃弾というビーム兵器を内臓。物語中盤からラスボス、不死のシヒカを倒す為、素粒子を停止させる特殊砲、五行(五行久遠封結界)を手に入れる。後半では反物質砲すら受け付けぬバリアを身に付けるなど、無敵っぷりを見せ付けてくれた。ではコミックスを手に入れられない人の為に、いきなりラストバトルの粗筋、いってみよう。ネタバレが嫌だったらここは読まないでね(笑)


河童一族の中で唯一魔王卵を産むことの出来る頭領シヒカ。様々な妨害に遭い、狷介はその出産を止められなかった。魔王卵が孵化すれば世界が滅ぶ。それはたった一匹で氷河期を起こすことの出来る悪魔なのだ。河童一族を殲滅しシヒカと対峙する狷介。しかし魔王卵を生む為にセーブしていたシヒカの能力はヤマテックを一瞬で吹き飛ばす物であった。丸裸にされた狷介は念動で身体を縛られ腕を両断される!そしてシヒカから超古代から連綿と続く恨みを語られるのだ。自分達河童は超古代文明によって作られた生体兵器であり、それを生んだ神牙一族の狷介が憎い。人類と言う種族が憎いと。最後の一太刀を狷介は身体で受け止める。「潔くなぞ死んでたまるかよ。見苦しくとも・・・無様でも・・・貴様を倒すっ!」突き刺さった剣を驚異的な胸の筋肉で絡み止め、頭突きを食らわせ、狷介は最後の変身を試みる。破壊されたはずのヤマテック。しかしヤマテックという鎧は狷介の心が形作り、狷介の心が動かす物であったのだ。切断されているはずの両腕が無くとも鋼鉄の腕は刀を掴み、シヒカに必殺の一撃を食らわす。辛くもシヒカを撃破した狷介だが、その目の前で魔王卵は孵化する寸前だった。虫の息のシヒカから核兵器の直撃を受けても傷一つ付かない事を知ると、狷介は自らの腹の部分にあるヤマテックのエネルギーコアに刀を突き立てる。反物質砲の直撃を受けてもビクともしない異常に高まった狷介のヤマテックのパワーは、一度暴走すると時間と空間を歪めるブラックホールを発生させるのだ。全てを飲み込む事象の地平の彼方へ魔王卵を放り込む事によって世界を救う。狷介は死を覚悟してこの戦いに臨んでいたのだ。「極神通神牙裂空解!」
全てを飲み込んだあの戦いから三年。梨沙は未だ狷介を待っていた。たった一人で戦っていた彼のことをいつまでも覚えていたい、覚えていなければならないと考えていた。いつかひょっこり現れて、笑いながらスカートめくりをするのだと信じて。眩しい陽光を仰ぎ見たその時、一陣の風が吹く。お得意のスカートめくりをしながらピースサインをする爽やかな風が。
と言う感じで物語は終わります。どうやって帰ってきたの?とか両腕あるじゃん?とか言う突込みは聞きません(笑)どっかの時空管理局の白い悪魔が亜空間を漂流中の彼を助けてくれたんでしょう、きっと(ネタが分からない人は流して〜)


序盤の作画の稚拙さ粗さは否めないこの作品ですが、作者も慣れてきたのか中盤から終盤までヤマテックの作画が鬼のように気合入ってます。ナックル部分の光沢とかアーマーの動きの躍動感とか。とてもデビュー作とは思えませんね。次期連載のスターロードという作品もありますが、太陽と月の力を得た特殊能力者達がバトルすると言うまあ少年漫画としてはお決まり過ぎる物で打ち切りになってしまいました。大人しくメカ物やってればよかったのに。誰も覚えてないよスターロード。編集者のテコ入れか? 自分のスタイルを守って欲しかったよ、まつい智先生。
そして、氏の作品も消息もはここから先は全く行方が知れない。同人でもいいからあの時のヤマテックのクオリティをもう一度見たい。漫画でメカを描くのは特別なセンスが必要だと私は思う。人を描くようにはいかない部分があるのだ。「装甲武神ヤマテック」は少年漫画としても、アーマー系ヒーロー物としても私のコレクションの中では結構上位に位置する作品です。もう一度、氏のセンスに触れてみたいと思う今日この頃。興味のある方は古本屋で見つけるか、オークションとかで時々あるので見つけてちょ。